第128話爆発寸前のアフロと、その陰で泣いている恋バナ

 わたしは今、好きな人と密着している。


 背中越しに伝わるあなたの鼓動を感じると、わたしの心臓もドキドキと脈を打つ。


 はぁ、幸せ……と言いたいところだけど、そんな暢気なことを言っている場合ではない。


 わたしとあなたは背中越しに縄で結ばれて身動きが取れないからだ。


 もうじき仕掛けられた爆弾が爆発する……。


 ――――


 ――時は数時間前に遡る。


 わたしはあなたの大きなアフロに惹かれていた。


 なんかおっきな鳥の巣みたいでカワイイ。


 いつかそのモサモサに手を入れたいな――なんて、幸せそうに友達に語る日々が続いた。


 そんな友達は昔から趣味が同じで、気が合った。


 だからわたしのことも理解し、恋愛相談も真摯に聞いてくれた。


「思い切って告白したら?」と言われたが、勇気が出ない。


 そんなわたしに、友達は呆れながらジュースを奢ってくれる。


 そしてそれを飲んだ途端、なぜか眠くなって気を失った……。


 ――目を覚ましたらこのありさまだ。


 友達はきっと、あなたのことが好きだったに違いない。


 わたしに復讐するために、こんなことを仕出かしたんだ。


 爆発の時間が迫る中、なぜかわたしの縄だけ緩む。


 そのタイミングであなも目を覚まし、ハッとなってこう言った。


「頭の中を探れ!」


 と。


 わたしは急いで手を突っ込む。


 モサモサした頭を掻き回し、しばらくすると爆弾――ではなくおもちゃのタマゴが出てきた。


 なんだこれ? と思っていると、爆弾のタイマー音も消える。


 わたしが首を傾げていると、タマゴが割れた。


 すると中から手紙が出てくる。


 友達の託した手紙だ。


 なにが書いてあるんだろう?


 わたしがゆっくり手紙を開くと、


「末永く爆発しろ」


 との一文があった。


 すべては仕組まれたことだった。


 友達はわたしのために、こんな大掛がかりなサプライズを用意したのだ。

 

「頭の中に手を突っ込む」という夢まで叶ったし。


 友達を疑った罪悪感と、想いのこもったサプライズに胸が痛い。


 わたしは複雑な気持ちになって、アフロの陰で泣いてしまった。

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