第121話拮抗するツナマヨ戦争と白黒のボーダーライン

 この学校では戦争が起こっている。


 とはいっても血で血を洗うような惨劇が繰り広げられているわけではない。


 洗うのは米だ。


 ツナVS鮭。


 購買部のおにぎりは果たしてどちらがおいしいかという論争が激化し、さらには警備部が出動するほどの戦争に発展した。


 改めて思う。


 やっぱり惨劇だわこれ。


 生徒会選挙が迫る一カ月前。


 ツナ派を支持する立候補者が何者かによって襲われた。


 現場に落ちていたピンクの切身から、おそらく鮭派の仕業と推測された。


 これにより選挙を辞退せざるを得なくなった立候補者の代わりに、鮭派から会長候補者が躍り出る。


 マズイ。


 この学校からツナマヨを消す気だ。


 ツナ派の僕からすれば、死刑宣告に等しい。


 そんなとき、


「あなたはツナ派ね?」


 と、購買部で声を掛けられる。


 これが君との出会いだった。


 中立派の君は僕をアジトへと案内した。


 なんと食堂の地下に秘密の階段があった。


 広大な地下空間に集まるレジスタンスたち。


 君が生徒会長になり、この学校に平和を取り戻す作戦らしい。


 僕はこれに賛同した。


 仲間の印に君が握ってくれたおにぎりが忘れられない。


 ハムやレタスが入った独特の具材だったけどおいしかった。


 一カ月後、僕たちは黒三角のおにぎりマークの旗を掲げ、鬨の声を上げる。


 ――そして開票の結果――


 君は見事に会長に就任した。


 歓喜の声を上げるレジスタンスたち。


 君の手を握りながら、僕は感極まって顔を上げた。

 

 するとどうだろう、君は不敵な笑みを浮かべて歪んだ口元を吊り上げた。


 同時に翻される黒三角の旗。


 裏に記されたそのマークは白の三角形だった。


 そこで僕は騙されていたことを悟る。


 なんてことだ。


 君はサンドイッチ派だった。

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