第120話拡声器で叫ぶわたしは、街を破壊する怪獣に新曲を贈る
わたしは高校でバンドをやっている。
ボーカル担当だが歌が上手いわけじゃあない。
ライブもいまいち盛り上がりに欠ける。
ちょくちょくドラム担当のあなたからドンマイと軽くディスられている。
むむ……だからわたしは中指を立ててこう言うんだ。
「うるさい」
傍から見れば仲の悪い二人に映ったかもしれない。
でも実際は違う。
わたしはあなたが好きだ。
しかも一方的に。
そのキレのいいドラム捌きを見たあのときから、わたしのハートは恋のビートを刻んで――あ、このフレーズ今度の新曲に使おう。
とにかく恋愛禁止はバンドの掟。
わたしは本音を言えずに想いを歌詞にしたためる。
この気持ちを声にできないストレスから、わたしは拡声器を使ってレコーディングを行い、みんなに内緒でネットにアップした。
そしたら次の日から大変なことになった。
拡声器を通したわたしの声は中毒性を生み、世界中で大ヒット。
しかし中毒性が酷すぎて、あらゆる分子の構造に変異をもたらしていく。
建物がプリンみたいに柔らかくなったり、庭のチューリップが人を食べた。
なんだよこの世界!?
さらには怪獣が現れて街を破壊しはじめる。
その怪獣はライブハウスを潰そうとした。
頭にきたわたしは拡声器を握る。
そして、ありったけの声で新曲をぶつけてやった。
――すると歌を聴いた怪獣は元の姿に戻った。
…………
その正体はドラム担当のあなただった。
なにやってんだよと尋ねるわたしに、
「この歌よすぎ」
と真っ直ぐな瞳で言ってくる。
わたしの歌を聴きすぎたせいで身体が変異したらしい。
バカかよ。
しかも、
「さすがウチのボーカルだな」
なんて恥ずかしいこと言うから、わたしは中指を立ててこう言うんだ。
「うるさい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます