第116話焦っているギャルが失敗した前髪で地下帝国の姫と間違われる

 アタシはギャルだ。


 この間、懸賞で送ったハワイ旅行が当たって超アガってる。


 白い砂浜でカレシと夕日観るとかヤバくない?


 ま、あたしカレシいないんだけど。


 とにかくこの懸賞、なくさないようにカバンに入れるし。


 まじ、アタシって最強じゃん。


 その翌日。


 学校に行く時間なのに前髪が決まらなくて焦る。


 仕方なく自分で切ったらミスって横一直線のぱっつんになった。


 サイテー……もう時間もないし。


 いいや、開き直って学校行こ。


 ……その数秒後。


「ひ、姫!? なんでここに!?」


 ――角を曲がったところで男の人とぶつかった。


 なんかアタシに敬礼してるし。


 どゆこと?


 首を傾げていたら、隣にアタシのそっくりさんがいた。


 まるで双子。


 性別もぱっつんの髪型も一緒だし。


 男の人が言うには、地下帝国の姫なんだって。

 

 え?

 

 何かの設定?


 どうやらマジっぽくて、地上見学をしているんだとか。


 なんかアタシと入れ替わってほしいみたいなんだけどウケる。


 よくわからんけど、おもしろそうだしおっけー。


 専用のマンホールから地下帝国に入ると、そこには地上と変わらないくらいの都市が広がっていた。

 

 マジ未来。

 

 男の人はアタシを案内してくれて、食事や乗り物、文化や挨拶を教えてくれた。


 なんか超優しいんだけど。


 しかもイケメンだし。


 ねぇねぇ、カノジョとかいるの?


 この質問に対し、男の人は微笑みながら遠くを見る。


 その視線は切なそう。


 ははぁん……なるほどね。


 あなたさっきの姫とかいうコが好きなんだ。


 ――しばらくして。


 アタシは帰り際、カバンから懸賞品を取り出して男の人にあげた。


「今度、姫と一緒に行きなよ。アタシは旅行できたからもういいし」


 男の人と姫は顔を見合わせ、恥ずかしそうに目を逸らす。


 ハワイの夕日みたいに真っ赤になって。


 もうラブラブじゃん。

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