第115話ガムを噛むネコがネコ耳の女の子に想いを伝える

 僕は飼われているネコだ。


 怪我をして動けなくなったところを拾ってくれて、それ以来ずっとこの部屋で面倒を見てもらっている。


 そんな君のことが好きになってしまった。


 それがきっかけで、いつしか人間になりたいと思うようになる。


 想いを伝えたくとも、ニャーくらいしか言うことができない。

 

 今日も君の膝の上でお気に入りのアニメを観る。


 アニメの世界はいい。


 ネコでも人間と喋っていて楽しそうだ。


 この現実もあんなふうにならないかなと想像するが、そんなことはにゃい。


 ネコはネコ、人間は人間だ。


 テレビを終わると、君は寂しそうに言う。


「わたしもネコだったらよかったのに……」


 どうやら学校でイヤなことがあったらしい。


 人間の世界も大変みたいだ。


 気の利いた言葉でもかけてあげればいいのだけれど、やはり僕はニャーとしか言えなかった。


 悔しさで柱に爪を立てる。


 カリカリ……。


 人間の食べ物を食べれば変身できないかと思い、君がいないときにこっそりガムというものを噛んでみた。


 ……が、カタくてすごく食べにくい。


 人間はよくこんなモノ食べるなぁ、と思う。


 すると口の中が光り出して、突然大きな風船が膨らんだ。


 咄嗟に吐き出すことができず、膨らんだ風船と一緒に僕は空を飛んだ。


 まるでアニメだ。


 やってきたのはとある神社。


 僕が拾われた場所だ。


 そこで君がお参りしている姿を見つける。


 君の頭に不時着すると、より強い光に包まれて僕たちは目を閉じた。


 ――しばらくすると僕は人間の言葉が喋れるようになっていた。


 そして君はネコの耳が生えて、僕の言葉がわかるようになる。


 神社が願いを叶えてくれたの?


 人間にはなれなかったけど、ニャー以外の想いが伝わることが、なんだか嬉しい。

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