第113話求愛する鳥が、なんともいえない空気で動画を配信した

 僕は無名の動画配信者だ。


 いつか有名になることを夢見て日々、動画をアップする。


 しかし再生数が伸びることはない。


 虚しくしょぼい動画がリストに増えていく。


 もう諦めようと思い、僕は最後の動画を撮影することにした。


 内容は君に告白するまでのドキュメンタリーだ。


 君には撮影することを隠しているため、最悪殴られても文句は言えないだろう。


(殴られるだけで済むのか?)


 ……そんな不安がよぎるけど、君への想いは本気だった。


 せめて楽しんで貰えるように計画を練ってきた。


 撮影当日、君をキャンプ地に呼び出して僕はバーベキューの用意をした。


 鳥の着ぐるみを着た状態で肉を焼いている。


 君が「なにしてるの?」と尋ねたところで着ぐるみを剥ぎ、指輪を持った僕が告白する手筈だ。


 スマホのカメラはずっと回している。


 さぁ、来い!


 と、そこで野菜がないことに気付く。


 肉だけだと飽きられてしまうだろうから、近くで山菜でも探すことにした。


 暗い林の中を歩いていると、足下にキノコを発見する。


 なんのキノコだろう?


 おいしそうだからいくつか持って帰って、焼いて食べてみた。


 うん、悪くない。


 そんなことをしていると君がやってきた。


 僕は着ぐるみを着直して準備を整える。


 予想通り「なにしてるの?」と聞かれたので、指輪を出そうとした瞬間――。


 なんだか気持ちよくなって踊り出してしまった。


 僕が食べたのは毒キノコだったらしく、鳥が求愛するようにダンスする様子は生配信でずっと流れ続けた――。


 結局、僕はフラれた。


 その時流れた動画の再生数もイマイチだけど、なんか配信するのが楽しくなったので、もう少し続けてみようと思う。

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