第109話壊れかけの自動販売機がお茶漬けで伝説のコーヒーをこぼした

 僕は壊れかけの自動販売機だ。


 ちなみにカップコーヒー専門だよ。


 そして二本足で移動ができる。


 ジュースを買ってくれる人を求めて、この荒廃した大地を歩く。


 でもお客がいない。


 昔、紛争が起こったせいで、ほとんどの人がいなくなったからだ。


 ……世知辛い。


 僕はメンテナンスのために自分の身体をいじっていた。


 自分で修理できるなんてえらいでしょ?


 そんなとき、お茶碗を持った少女が僕の前で立ち止まった。


 即座に、


「お湯をちょうだい!」


 と言って茶碗を僕の身体に突っ込んだ。


 メンテ中にボタンを連打したものだから、排出口でコーヒーが全部流れ出た。


 なんてことしてんだよ!


 これは100年モノの伝説のコーヒーなんだぞ!


 ああ……もう手に入らない……。


 自動販売機が膝をついていると、君が


「ごめん」


 と謝る。


 なんか寂しい顔をしていたので話を聞いてみると、僕をお茶漬けの自動販売機と思ったらしい。


 お茶漬けのことはよく知らないが、君の先祖はそういったモノをよく食べていたのだとか。


 この大地のどこかにどんな食物でも手に入るオアシスがあると聞いて、『シコク』という場所からやってきたのだという。


 待てよ?


 ひょっとしてそこには伝説のコーヒーもある?


 話を聞いているうちに僕も行きたくなった。


 二人は話し合ってオアシスを目指すことにする。


 でも、このトーキョーには存在しないことがわかり、僕たちは北を目指すことにした。


 『トショカン』という場所で調べたから、間違いないと思う。


 真っ白で甘い飲み物の写真、伝説のコーヒーは『キタカイドウ』の『ウシ』という人から貰えるらしい。


 なんだかわくわくしてきた。


 よし、行くぞ!

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