第106話数奇な人生を歩んだ掃除当番が全て消え去った丘の上で飛び散る彼を
わたしは数奇な人生を歩んだ掃除当番だ。
正確には清掃員。
見た目は女子高生だけど、中身は二十歳を過ぎている。
この歳で学生服着るなんてちょっとしたコスプレだわ……。
ちなみにわたしの正体は探偵だ。
清掃員に変装して、ある男性を追っていたところ、そいつが時空を飛んで消えた。
なに言ってるのかわからないと思うけど、ガチな話だ。
その能力を調査するのがわたしの仕事。
ただ、近くにいたわたしも時空を飛ぶ能力を得てしまった。
この能力を得たおかげか、身体が少し若返っているのが嬉しい。
――と、それはさておき。
とある条件でこの能力は発動するようなのだが、何度も同じようなことをしているうちにだんだん法則がわかってきた。
よって、清掃員としての変装も今日で終わりかもしれない。
わたしは放課後の教室を箒で掃きながら、ターゲットであるあなたが来るのを待った。
「手伝おうか」
――そんな声が背後から聞こえる。
やってきたあなたは、なんでもない素振りで掃除を手伝い始めた。
当番でもないのに机を運んでくれる。
その最中、そっと手が触れた。
わたしの心臓が高鳴る。
目が合うとあなたはハッとした表情を浮かべた。
わたしが時空を超えてやってきたことを悟ったらしい。
あなたは教室を飛び出して学校の裏手にある丘に逃げた。
すぐさま追いかけたわたしは、そこで時空移動の衝撃波に巻き込まれる。
更地になった丘は、ただ静かに夕日に染まっていた。
……あなたはまた、どこかへ行ってしまった。
さっきまで触れていた手が、まだ温かい。
わたしは唇を噛み、教室へ戻る。
あなたの机からわたしの写真が出てきた。
二人で肩を寄せ合い、笑っている。
――あなたを想うほど、また距離は遠くなる。
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