第104話犬を操れるわたしは、一目でウソとわかる暗殺者と見つめ合う

 わたしは飼い犬を操れる能力を得た。


 きっかけは散歩をしていたときだ。


 いつものコースとは違う道に飼い犬が駆け出したため、わたしは慌てて後を追った。


 薄暗い森の中に辿り着くと、地面の中にぼんやりと光る石が埋まっていた。


 それに触れた瞬間、わたしと飼い犬は気を失い、目が覚めたときには能力を取得していた。


 犬を操れるってどういうこと?


 それは犬が空を飛んだり、匂いを嗅いで落ちているお金を発見したりと、わたしの指示があればいろんなことを実現してくれる。


 まぁ、めちゃくちゃな話なんだけどね……。


 能力を得た数日後、わたしたちが散歩しているところにクラスの友達と出くわした。

 

 友達――もといあなたはいつも、


「オレは暗殺者だ」


 と中二病のようなセリフを口にしているが、はたして本当だろうか?


 たぶんウソと思うけど、せっかくなので飼い犬に判定してもらうことにした。


 スンスンとあなたの匂いを嗅ぐと、「ワン!」と吠える。


 するとあなたの一族にまつわる映像が空中に浮かんできた。


 なんと、長きにわたり敵対の組織と戦っているらしく、あなたはいつ暗殺されてもおかしくない。


 ……え、マジ?


 しかもその敵は、地球を滅ぼすために創り出した遺伝子を変質させる宝石を、近所の森に埋めたようだ。


 ――って、それわたしたちが触ったヤツじゃん!


 ウソみたいな話に惚けている間もなく、このタイミングで敵対する組織が周囲を取り囲んできた。


 タイミング最悪……。


 まるで映画じゃん……。


 もう面倒臭くなったわたしは


「やっつけて!」


 と叫ぶ。


 すると、口から光を吐いた飼い犬が、組織を一瞬で壊滅させた。


 一方、衝撃波からわたしを庇ったあなたは


「大丈夫か?」


 と尋ねてくる。


 そこで目が合った瞬間、あなたの思念が頭に流れ込む。


 どうやらあなたはわたしのことが好きだったらしい。


 よりにもよって、このタイミングで勢いに任せて告白しようとしているみたいだ。


 なんだよこれ。


 ツッコみどころ多すぎだよ……。


「……映画かよ」


 だからそんなことを言ってみた。

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