第102話VIP待遇の生徒会長と宇宙人のグルメ

 わたしが初めてVIP待遇の生徒会長と出会ったのは今年の春のことでした。


 あなたのお弁当を盗んだわたしはうっかり見つかってしまって、そこで目が合いましたね。


 外はとても桜吹雪がきれいでした。


 つい見惚れてしまいそうなくらいに。


 でも、それ以上にわたしはあなたにうっとりでした。

 

 唐揚げを頬張るわたしの頬に手を翳し、


「おかわりは自由だ」


 と米粒を取ってくれました。


 ついでに追加のお弁当もシェフに頼んでくれたのです。


 クールです。


 ああ、なんかドキドキします。


 もう一度その眼差まなざしをおかわりさせてください。


 ――話は飛びますが、そもそもわたしは宇宙人なのです。


 驚きましたか?


 天候による故郷の食糧難を救うため、環境の似た星に潜入して食べれるものを探していたのです。


 幸いこの星は豊かなので、いい食物が見つかりそうです。


 VIP待遇の生徒会長――あなたのおじいさまが創設されたこの学園に入学して正解でした。


 心の広いあなたは毎日いろんな食物をわたしに提供してくれます。


 はむはむ……うん、どれもおいしいです。


 こうしてたくさんのサンプルを採取した結果、ふるさとで栽培できそうなものが集まりました。


 これで安心して帰れます。


 お別れはつらいですが、最後に友好の印として唇を重ねました。

 

 あなたの星ではキスというのですね?

 

 あなたは不意をつかれたせいか顔が真っ赤です。

 

 トマトみたいでおいしそう。

 

 でも、わたしも衝撃でした。

 

 あなたからとてもおいしい味がしたからです。

 

 どうしよう、気になって帰れない!


 ――結局この味を覚えるために、今日も隙あらばキスを仕掛けます。


 そんなに逃げないでください。


 おかわりは自由ですよね?

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