第101話メガネは心の中もみえる

 君は学生でありながら発明家だった。


 新作の「心が見えるメガネ」を僕に見せたいという。


 ということで、ショッピングモールで待ち合わせをして、僕たちは合流することになった。


 ところが待ち合わせ場所に君の姿はなかった。


 近くのド派手な観葉植物の根本を見ると、例のメガネが弾き飛ばされたように落ちている。

 

 僕は胸騒ぎがした。


 君は発明家ゆえに、身代金目的の組織からよく狙われていた。


 きっと今回も、そいつらに連れ去られたのではないか?

 

 そんなことを思いはじめる。


 連絡しても出ないし…………これは大変だ!


 しかし行方を知る手掛かりはなかった。


 悩んだ末に僕は一つの案を思いつく。


 このメガネを観葉植物に掛けたらどうなるだろう?


 同じ生き物という点では、植物が見た景色を投影できるかもしれない。


 ……僕は葉っぱを掻き分けながら幹の部分にメガネを掛けた。


 すると空中に植物が見た景色が映像として投影される。


 スゴイ!


 君が何者かに攫われる瞬間まで丸わかりだ。


 僕はこれを利用して君の行方を追う。


 途中、植物や野良猫にメガネを掛けて、少しずつ君との距離を縮めていった。


 そしてひとけのない港の倉庫で気絶した君を発見する。


「しっかりして!」


 と近寄る僕に対し、いきなり目を覚ました君はメガネを奪って僕に掛けた。


 すると普段の君に対する想いが全部倉庫の空間に投影される。


「なるほどね」


 と頷く君は、これまでの出来事は芝居だったことを明かした上で、本題を口にした。


 この一連の流れは、新作メガネのテストだったという。


 今までは恋愛感情がうまく反映されなかったらしいのだが、


「合格」


 と顔を赤くする君の様子から、メガネの完成が確認できた。

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