第100話100年の想いと、これからの二人

 この学校の生徒は、わたしとあなただけだ。


 小さな島の中央に、ぽつんと建った真っ白な校舎で、丘の上から四方の海をぐるりと見渡せる。


 そんな島の学校で、わたしとあなたはずっと留年し続けていた。


 もう何回目だろう……わたしとあなたは今年で100歳だ。


 それだけ歳をとっているにも関わらず、見た目は小学生の時と、さほど変わらない。


 昔、研究室で開発していた薬を飲んでしまい、わたしたちは身体に異常をきたしたからだ。


 それから歳をとらなくなり、なぜか二人はこの島へ強制的に転校させられた。


 先生はわたしたちが描く未来予測の絵を見てデータをとっているらしい。


 今のところ100パーセント未来は的中して、先生たちはとても驚いていた。


 この学校を卒業する条件は、「未来予測の実用化」らしい。


 未来を予測してなにをするつもりなのだろう?


 お金を稼ぐ? 戦争?


 いろいろ思いつくけど、そんなことはどうでもよかった。


 なぜならわたしたちは、予測によってそれが実現しないことを知っていたからだ。


「また今年も留年だな」と、ため息をついただけだった。


 ――でも。


 終わりというものはやってくる……。


 ある日の夜、夢を見たわたしたちは、二人で学校の屋上から星空を眺める。


 流れ星が無数に降る夜空に、


「二人で卒業できますように」


 と手を繋いで願う。


 ひときわ大きな星が水平線の彼方に落ちたと思ったその瞬間――もの凄い衝撃波を受けて学校は光に包まれた。


 真っ白な世界の中で、わたしたちはゆっくりと目を閉じる。


 信じられないことに、それから何年もの時が過ぎ、二人は記憶を継承したまま生まれ変わった。


 奇跡だ。


 高校生になった姿で、桜という花をバックに写真を撮っている。


 あの真っ白な世界を越えて以来、未来が見えなくなったけれどこれでいいと思う。


 なぜならあなたと二人なら、どんな世界にでも未来を描けるような気がしたから。

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