第90話悪の組織から地球を守るあなたに
この教室は指令室になる。
わたしがこの事実を知ったのは高校に入学して数日後のことだった。
ホームルーム中に響き渡る、けたたましいサイレンの音。
それと同時に先生からありえないことを聞かされる。
「君たちの手で地球を救ってくれ!」
――なんとこの学校はロボットの格納庫で、悪の組織と戦う政府公認の秘密基地でもあるようだ。
……どうりで最近、黒タイツや怪獣みたいなのが多いと思った。
出撃命令が下れば、戦闘スーツに着替えて巨大ロボに乗り込む。
アニメに出てくるような五体合体するようなメカを操縦して、わたしたちは悪の組織と戦った。
戦闘に勝利する度、あなたはとても爽やかな笑顔を夕日に向ける。
いつしかその笑顔がずっと見ていたくて、わたしの胸はときめいた。
でも、この活動ができるのも高校生でいられる三年間が限度らしい。
「あなたと、もっと戦っていたい……」
そんな想いを胸に秘めたまま、わたしたちは卒業の日を迎える。
それから数年の歳月が流れた――。
学校を卒業して、わたしは悪の組織に就職した。
あなたへの想いを糧に頑張った結果、見事に出世を果たす。
噂によるとあなたは、政府関係の仕事に就いて世界を守っているらしい。
離れ離れになってしまったけれど、あなたがわたしの手下たちを蹴散らしていると思うと胸がキュンとする。
豪奢な椅子に深く腰を下ろし、わたしはモニター越しに薄く微笑んだ。
「早くわたしのもとへ来て――」
地球を人質にして、わたしは今日もあなたが来るのを待っている。
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