第88話糸巻きの館
学校の裏手にある山を登って行くと、古びた館が建っている。
昔、悲しい出来事があって今は誰も住んでいないようなのだが、ときおり人の気配を感じるなどの噂もある。
あなたは肝試しをしようと館に乗り込むことを提案した。
私を含め、クラスの数人は森の奥へと足を踏み入れることになった。
そこで事件は起こる。
館に入るなり、突然扉が閉まって外に出られなくなった。
昔、ここで悲劇の死を遂げた婦人の亡霊の仕業だ。
ポルターガイスト現象に館が揺れる。
恐怖に怯えるわたしたちは、とにかくここから逃げようとした。
けれどこれが悪夢の始まりだった。
クラスメイトは次々と犠牲になる。
シャンデリアの下敷きになったり、腐った床から暗闇の底に落ちていったり、もう、どうにかなりそうだった。
最後に残ったわたしとあなたは、おぞましい量の蜘蛛に追われて屋上に出る。
夕日を背景に婦人の亡霊は立ちはだかった。
この館ごと崩壊させて全てを無にするつもりだ。
建物が崩落する中、わたしたちは意を決して屋上から飛び降りた。
……気絶したわたしは、樹々の間からもれる朝日で目が覚める。
朝霧に浮かぶ崩壊した屋敷のもとへ歩いていくと、一匹の蜘蛛がいた。
それを見て思い出した。
ここに住んでいた婦人は、自分が飼っていた蜘蛛を逃がしてしまい、子供が運悪くその毒にやられて亡くなったのだとか。
ショックで狂った婦人は飼っていた蜘蛛を全部食べて、いつしか自分も蜘蛛になったとかいう嘘くさい都市伝説があったけど……あれ? そういえばあなたの姿が見当たらない。
ここに横たわる糸巻き状の物体は、はたしてなんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます