第87話プレゼント

 卒業前のイベントとして、今度クラスでお楽しみ会をすることになった。


 なんでもプレゼントの交換会をやるらしいので、参加者にはプレゼントを用意することが義務付けられる。


 何にしようか?


 考えていると君がぴょこっと顔を覗き込んできた。


「ねぇ、一緒に買い出しに行かない?」


 ――次の日、僕たちはショッピングモールで待ち合わせをする。


「う~ん、どうしよう……」


 いざモノを選ぶとなると決まらないものだ。


 洋服、ハンカチ、アクセサリ、食べ物、おもちゃ……いろんな物が目に映り横に流れていく。


 誰の手に行くかもわからない物を選ぶのは難しい。


 文房具コーナーの前で頭を捻っていると、君が「決まった?」と聞いてくる。


 どうもお互い決まらないようだ。


 気分転換のためにしばらくその辺を歩くことになった。


 君は僕の隣を歩き、昔話を語り始める。


 僕たちは中学で初めて出会って、高校まで同じクラスだった。


 成績もよく似てるし、趣味も近い。


 君は絵を描くのが好きだった。


 将来はその道で食べていきたいと、よくラクガキ帳を見せてくれた。


 卒業したら君は大学へ行く、お互い離れ離れ。


 そんなとりとめのないことを話したあと、結局なんでもないプレゼントを買って二人は帰宅した。


 お楽しみ会の当日、交換会も終了してみんな解散となった。


 僕は顔なじみのない生徒のプレゼントを貰い、君も同じようなことを言っていた。


 帰り際に「じゃあね」と手を振ったので、僕は追いかけてとある箱を渡す。


 中にはボールペンが入っている。


 安っぽいけどラクガキに使ってほしい。


 いつか夢を叶えたら、このボールペンも想い出になるのかな。

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