第79話迷走する焼きそばパーティー

 今度の日曜日に焼きそばパーティーをすることになった。


 君が学園祭のときに食べた焼きそばが忘れられないと言ってきたからだ。


 僕は材料を揃えて休日に備える。


 しかし当日、君は「何か違う」と言った。


 単純に作って食べるのでは満足いかないと言い出したのだ。


 原因は雰囲気にあるという。


 確かに学園祭は賑やかで活気があった。


 じゃあBGMを流せば、それっぽくならないだろうか?


 ついでにお祭りの動画も追加してみては?


 実際やってみると、部屋の中は賑やかになった。


 賑やかにはなったけど、しかし、これじゃない感が否めない。


「よし、外へ行こう」


 屋外に行けば、ヒントがあるかもしれない。


 僕は器具と材料を持って玄関を出た。


 確かこの近くに、眺めのいいキャンプ場がある。


 無料で使えるところだから、そこで料理してみよう。


 やってきたのは丘の上。


 松の木の間から水平線が覗いている。


 キラキラ光る海面にウミネコが戯れて、なんかいい雰囲気だ。


 さっそくホットプレートの上で焼きそばを炒める。


 と、ここで肝心なことに気が付いた。


 ソースを忘れてしまったみたいだ!


「…………」


 味のない焼きそばを食べてから、僕たちは無言で家に帰る。


 だけどこのままじゃ終われないということで、コンビニで買ったカップ焼きそばを二人で食べた。


 ……お腹はいっぱい。


 二人は肩を落として、ため息を吐く。

 

 …………


 でも、なんでだろう?


 君と食べるカップ焼きそばは、一人で食べるよりすごくおいしく感じた。


 だけどそのことを不満気な君の前で話すのは怖かったので、僕はあえて黙っておくことにした……。

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