第78話地球での出会い

 遥か未来の話。


 人類が月で生活するようになってから、もう随分と時間が経つ。


 わたしは学校で地球のことについて学習した。


 今でもいくらかの人類は地球で生活を営んでいるようだけど、わたしは地球に行ったことがない。


 だから青い海や白い雪に憧れる。


 一度でいいから青い惑星をこの目で見たいと思っていた。


 高校二年の初夏。


 わたしのクラスは修学旅行で地球に行った。


 友達のほとんどは地球に行くのが初めてだったみたいで、道中の機内ではしゃぐ声があちこちの席から聞こえてきた。


 そしてわたしたちは、ニホンと呼ばれる大地に降り立つ。


 広々とした草原が風に靡いて、遠くの空で見たことのない大きな雲が流れていた。


 興奮したわたしは、思わず当てのない道をどこまでも駆け抜ける。


 けれど重力の影響ですぐに疲れてしまった。


 訓練は受けてきたけど、やっぱりキツイ……。


 草原で仰向けになっていると、「大丈夫?」と男の子が声をかけてきた。


 手にはビンに入った白い液体を持っている。


 それは粉で作っていないミルクだった。


 すごい! 天然なんてめったに飲めないのに!


 物欲しそうなわたしの視線に気付いて、男の子はミルクをくれた。


 一気に飲み干したわたしは、男の子としばらく話をする。


 どうも同い年で、今度月に旅行に来るらしい。


 ミルクのお礼にわたしはなにかしてあげようと思った。


 すると男の子は「友達になってほしい」と言う。


 わたしは「いいよ」と頷く。


 地球で出来た初めての友達。


 わたしは握手を交わしたあと、手を振りながら、


「こんど月に来たときに、いい物あげるからー!」


 と、言う。


 名物うさぎ饅頭、楽しみに待っててね!

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