第74話イレギュラーな展開

 計画を立てたときに限って、イレギュラーは発生する。


 つまり予定は予定通りには進まないということ。


 これってなんでだろう?


 神様を呪いながら、わたしはその事態に直面している。


 デートの当日にあなたがやってこないからだ!


 この日のためにどれだけ計画を練ったことか。


 以前よりあなたのことが気になっていたわたしは、学校からプライベートまで密かにあなたのことを調べていた。


 ……まぁ、明らかにストーカーみたいでごめん。


 でも、あなたの体操服は二回しか嗅いでないから許してくださいすみません。


 と、とにかくわたしはあなたを誘うために計画を練りに練った。


 そして今日、初デートの日に「熱っぽい」ってどういうこと!?


 あなたの体調までは計算に入れてなかったよ!

 

 わたしは公園のベンチに座ったまま、濁った瞳を空に向ける。


 空は青かった。


 びっくりするくらい……青い。


 それが余計切なくする。


 せっかくあなたの好きな服装をしたのに。


 下着の趣味も髪型も。


 このイイ香りのする香水も。


 みんな……ぜんぶ無駄になる。


 なんで……?


 どうして?


「そうだ。看病を口実にいっそ部屋に忍び込めば――」


 そんなことを呟いていると、「やめろ」とツッコみが飛んできた。

 

 振り返ると目を細めたあなたが立っている。


 なんでこんなところにいるのか聞いてみると、どうやら体調不良はウソだったようだ。


 最初からわたしをびっくりさせるための作戦だったらしい。


「もう、心配したじゃない!」


 わたしは頬を膨らませて怒る。


 するとあなたは「体操服を嗅いだ人に言われたくない」と言った。

 

 え、バレてたの?


 気まずくなって下を向くわたしに、


「ところで僕のパンツ知らない?」


 と、あなたは言う。


 ……イレギュラーな一言。


 たぶんパンツの在処はわからないと思うけど、念のためにわたしはそっとスカートの裾を押さえた……。

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