第63話タイム・タイムカプセル
小学生の頃、近所の林にタイムカプセルを埋めたのを思い出した。
君と一緒になって、お菓子の缶にいろんなモノを詰めたっけ。
そのことを話したら「よし、掘り返そう!」と君はノリ気になった。
思い立ったらすぐ行動するんだな……。
手頃なスコップを持って僕たちは林に向かう。
――が、ここで肝心なことを思い出した。
あの缶には見られたくないモノが入っている。
それは君に宛てた手紙のことだ。
チラシの裏に「けっこんしよう(はーと)」と書かれた内容。
ぜったいに見せられないッ!
咄嗟に言い訳を考えた僕は、「場所がわからないから引き返そう」と言った。
実際、高校生になった今となっては、埋めた場所が曖昧なのも事実。
けれど君は「大丈夫、これがあるから」と、埋めた場所を記した地図を鞄から出した。
なんて準備がいいんだろう……。
断る言い訳を思いつかず、結局、地図を頼りに林の奥へと進んだ。
すると缶が埋まっている場所に辿り着く。
二人で土を掘り返してみると、カツンと金属が当たる音がした。
お菓子の缶は無事だった。
(終わった……)
そんなことを思っていると、君は腐食が進んだ蓋を開けて中身を見る。
案の定、君は手紙の中を読んで黙ってしまった。
何を言われるかビクついていると、君は「渡したいものがある」と言って、缶に入れていたオモチャの指輪を僕の薬指に入れて言う。
「わたしも同じこと思ってたから」と。
僕は「なんだよそれ」と言いながら笑った。
夕日が沈む頃。
僕たちは未来の家族へ宛てた手紙を、そっと缶の中に入れて埋めた。
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