第56話肝試しのハズが……

 学校の近くに心霊スポットがある。


 わたしはそこで肝試しをすることになった。


 数人の友達を誘い現地に集合する。


 そこは赤い鳥居が建てられた森の中。


 その先は長い石段が山頂へと続いていて、昼間なのに薄暗くて湿っぽい。


 風に揺れる枝葉の音でさえ不気味に聞こえた。


 くじ引きをした結果、わたしはあなたと階段を上ることになる。


 軽く挨拶を交わして、二人は鳥居を潜った。


「……静かだね」


 あなたは周囲を見渡しながらボソリと呟く。


 ひとけのある場所から離れているせいか、確かに静かだ。

 

 でも、静かすぎると音が欲しくなる。


「何か話してよ」


 わたしはそんな注文をつけた。


 あなたは困ったように腕を組み「それじゃあ――」と口を開く。


「この階段は天国に続いているって伝説があるんだ。死んだ魂がちゃんと登れるように昔からここにある。でも、迷える魂は誰かが導いてあげないといけない。例えば――」


 そんなことを言うと、あなたはわたしの手を握って走り出した。


 わたしは「待ってよ!」と戸惑いながら引っ張られる。


 あっという間に頂上に着いて、眼下に広がる街の風景を眺めた。

 

 ――でも、


「あ、あれ?」


 やけに景色が高いことに違和感を覚える。


 よく見たらわたしは浮かんでいた。


 しかもあなたまで!?


 なんでこんなことに!?


 ひょっとしてわたし死んじゃった――


 ――と思ったところで目が覚めた。


 赤い鳥居の前で眠っていたらしい。


 手の中を見ると、最初に引いた「くじ」を握っている。


 そこにある確かな温もり。


 だけどそこにあなたはいない。


 どこにいったの?


 あとで知ったことだけど、この肝試しに、最初からあなたは参加していなかったという。


 しかもその時間帯、交通事故で病院に運ばれたとかで……。


 ――――


 わたしの手を引っ張ったのは誰だったのか?


 今でも空を見上げると、あなたの声が聞こえるのは気のせいかな……。

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