第54話ギャル☆鍋

 ヒマだ。


 おなかすいた。


 先生の授業を聞きながら、半ば意識が飛びそうな状態で黒板を見ているアタシ。


 半開きの口からヨダレが落ちかけたところでチャイムが鳴った。


 今日の授業は終わり。


 ウェーイ! 何しよ~?


 気合の入ったネイルを斜陽に透かしながら廊下を歩く。


 窓に映ったマシマシの巻き髪。


 短いスカートに少し焼けた小麦色の肌。


 そこに映った自分を見て立ち止まる。


 なにをしようか思いつかなかった。


「ウェーイ! 鍋やろ~☆」


 なんとなく寒いから鍋やることにした。


 鍋おいしいし、ありよりのありだよね。


 アタシはスマホを弄りながら帰り道を歩く。


 ……と、後ろで「あの~……」と声がした。


「なんで僕まで……」

 

 肩を落としたあなたはノリ気じゃなさそう。


 一人じゃつまんないから連れて来たのに。


 いいじゃん鍋だよ鍋?


 ほら、もっと楽しく、うぇ~い☆


 とりあえずアタシの部屋にガスコンロと鍋をセット。


 材料を並べてあとは楽しそうにやればOK!


 まぁ、鍋とか作ったことないんだけど。


 だから記念すべき初鍋! うぇ~い☆


 ということでチョコレートを入れようとしたんだけど、あなたが全力で止めてきた。


 なんで~? じゃあクッキーは? これもダメ? え、貸せって? はいはいわかったし。


 ――結局、全部作ってくれた。


 そしたらなんかヤバいレベルの鍋ができた。


 超神鍋!


 作り終えたあなたは少し疲れた様子。


 せっかくだからじゃんじゃん食べなよ。


「ほら、あーん」


 アタシは肉団子をふーふーして口に入れてあげた。


 なんか顔赤いけど大丈夫?


 それから全部食べ終えて、お腹いっぱいになる。


 ふー……。


 明日もヒマだし、鍋しか勝たん。

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