第50話そのころ向こうでは……

 わたしの家にドッペルゲンガーがやってきた。


 しかもあなたのドッペルゲンガーだ。


 なんだか眠そうだね。


 でも、ベッドは一人用だから貸さないよ。


 わたしはあなたの分身を帰そうとする。


 けれど頑なに部屋に留まろうとした。


 話を聞いてみると、わたしへの想いが強すぎて自我が分裂したのだとか。


 え、好きなの?


 ちなみにあなたの本体は家でゲームをやってるらしい。


「いいから帰りなって」


 わたしはあなたを部屋から引きずり出す。


 なんとか玄関まで連れていったけど、そこから離れようとしない。


 足を掴んで引っ張っても、ドアにしがみついて鯉のぼりみたいな体勢になっている。

 

 ……なんなんだこのドッペルゲンガー……。


 わたしはムキになって無理矢理あなたを玄関の外に出す。


 しばらくすると静かになり、気付けばドッペルゲンガーは消えていた。


 ――翌日。


 学校で会ったあなたはゲッソリしていた。


 なんでも昨夜、あなたの部屋にわたしのドッペルゲンガーが現れたのだという。


「今夜は寝かせない」とか言って一晩中ゲームに付き合わされたのだとか。


 あなたの家にも現れていたなんて……。


 ……わたしの分身が、すみませんでした。

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