第49話まやかしでない気持ち

 僕の実家は代々占い師の家系として知られている。


 成人すると家業を継ぐことが習わしなので、高校生になった辺りから占いの館で修行を始めていた。


 頑張った甲斐あって、僕は実力をつけていった。


 特に恋愛に関する占いが上達して評判を呼ぶことになる。


 毎日近くの学校からたくさんの女子生徒が店にやってきて、自分の将来や、気になる相手との相性を聞きに来た。


 今日も忙しくなりそうだ。


 そんな時、お客としてやってきたのは君だった。


 ローブに包まれた顔を覗かれ、僕が占い師であることを知った君は驚いている様子だった。


 いや、僕も驚いている。


 だって僕は君のことが――。


 平静を装い赤面する顔をローブで隠す。


 とりあえず水晶を用意してチラリと球体を覗いてみた。


 すると、僕と君が付き合っている姿が映っている。


 し、しかも将来はけ、け、結こ……どうしよう、言っていいのか?


 でも、言わないと仕事にならないし「実は前から君のことが――」とか言ったら遠回しのプロポーズとかに思われそうだし。あわわわ……。


 とりあえず占いを続けていたのだが、僕の気持ちに気付いたのか、君は顔を赤らめて狼狽え始める。


 そして占いの続きを聞く前に、水晶玉を抱えて店を飛び出してしまった。


「ゆ、指輪代わりにもらっとくからっ!」


 とセリフを吐いて消えていった君の背中を、僕は茫然と眺める。


 え? あれは代々自分の結婚相手に渡す水晶。


 待って、せめて自分の手で渡させて!


 まやかしでない気持ちを伝えるために、僕は君の背中を追いかける。

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