第48話占いの館で

 学校の近くに占いの館があると聞いて、わたしはその場所へと向かった。


 なんでも恋愛に関する相談を専門に受け付けているという。


 どうやら水晶玉の中に、好きな人が映るらしい。


 少し嘘くさい気もするけど、まぁいいや。


 ――正直に言うとわたしはあなたのことが好きだ。


 そして以前からあなたは誰が好きなのか気になっていた。


 だったら占ってもらおう。


 あなたの写真を持って、わたしは館へと向かう。


 薄暗い室内に足を踏み入れると、正面に丸いテーブルがあり、天井から紫色のカーテンが怪しく部屋を囲んでいた。


 ローブを纏った占い師に声をかけようとした時、なんだか違和感を覚えて占い師の顔を覗き込む。


「……え? なんでここにいるの?」


 なんと占い師はあなただった。

 

 こちらに気付き「やあ」と手をかざす。


 聞くところによると、ここでバイトをしているらしい。


 …………


 先に言ってよ。


 っていうかどうすんのコレ?


「じゃあさっそく――」と言ってあなたは水晶に手を伸ばす。


 もし噂が本当なら、瞬時にわたしの頭の中がバレてしまうに違いない。


 これじゃあ遠回しの告白……。


「ばっ……それはダメぇーーーっ!」


 気が動転して、わたしは背後からあなたの目を塞ぐ。


「べ、べつに好きな人いないし!」


 と、むりやり叫んでごまかした。


「じゃあなんで来たんだよ!」とツッコまれながら揉み合うこと数分。


 両者が疲弊したところで、わたしはとんでもない手段に打って出た。


 商売道具の水晶を抱え、店を飛び出したのだ。


 あなたは当然引き止めようとするが、わたしは咄嗟に口を衝く。


「ゆ、指輪代わりにもらっとくからっ!」


 ――十年後。


 わたしの子供は、この水晶をおもちゃにして遊んでいる。


 両手をかざしてじーっと眺めるその表情は、なるほどあのころのあなたにそっくりね。

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