第47話夜中の学校にて

 この学校には幽霊が出るらしい。


 なんでも構内をゆらりと人魂が彷徨っている様子がよく目撃されているとか。


 そんな話を聞いたら気になってしまう。


 僕は興味本位で調べてみることにした。


 ――次の日の夜。


 こっそり学校に忍び込んで探索を始めてみた。


 慣れない時間に家を出たせいか、身体と頭がぼーっとする。


 ライトだけは落とさないように、暗がりの中を進んで行った。


 すると「キャッ!」という短い悲鳴が上がり、ドサッと何かが倒れるような音がした。


 反射的に光を向けると、メガネをかけた女の子が震えているのを発見する。


 もしかして幽霊? と思ったけれど、ちゃんと足もついてるし、体温もある……ってゴメン!


 僕は無意識に握っていた彼女の手を離した。


 どうやら彼女も幽霊を探しているらしい。


 だけどすごく臆病な性格らしく、本物と出会ったら気絶するかもと言っていた。


 そこで僕は「一緒に行く?」と提案してみる。


 一人で行くよりは怖くないだろう。


 君は何度も頷いて、同行することを了承した。


 改めて僕は彼女の手を取り、学校の中を進んで行く。

 

 ずいぶん長い時間学校の中を歩いたが、結局この日は幽霊と遭遇しなかった。


 ――そして次の日。


 この日から僕たちは共に夜の学校に忍び込むことが増えた。


 毎日彼女の手を引て暗がりの中を進んでいく。


 手の温もりが、伝わってくる。


 こんな毎日を繰り返すうちに、突然頭の中がハッとした。


 そうだ、そうだった……。


 失っていた記憶がよみがえる。


「そういや僕、死んでたんだっけ……」


 ――事故死の後、成仏できずに僕は夜の学校を彷徨っていた。


 そして生前、君は同じクラスにいたような気がする。


 よく笑顔で話し掛けてくれていたような……。


 色々思い出している最中、女の子は震えながらも手だけは離さなかった。

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