第44話邪神の瞳

 わたしの右目には不思議な力がある。


 見た相手の心を読み取ることが出来るのだ。


 だから授業中はうるさくて仕方がない。


 つい意識してしまうと、あの人やこの人の考えていることが丸見えになるからだ。

 

 これでは気になって勉強どころではない。


 ――とある平日の午後。


 教室でぼーっとしているところに視線を感じる。


 わたしはすぐに力を発動して、その方向を見た。


 すると幸せそうな表情であなたがこちらを見ている。


 端的に言って、わたしのことが好きらしい。

 

 それからも頻繁に見てくるものだから、あなたの心を探ってみた。

 

 なんとあなたの右目は未来を見ることが出来るらしい。


 しかも将来はわたしと付き合っているというのだ。

 

 なるほど、興味深い。

 

 しかしわたしが死ぬ未来もあるらしく、そっちの確率のほうが圧倒的に高い。

 

 なんでも帰宅途中に車が突っ込んでくるとか。


 ……最悪じゃん。


 だからわたしは、未来を変えれるのか実験してみることにした。

 

 もちろん出来る範囲でだけど。


 通学路を微妙に変えてみたり、事故を起こす車の持ち主に匿名の電話を掛けたりした。

 

 色々やって訪れた運命の日。

 

 なんと事故は起こらずに、わたしは助かることが出来た。


 あなたはその結果に安堵している。


 と、次の瞬間――。


 わたしの左目が進化して、見た人の未来が見えるようになった。

 

 なんとあなたは半年後に死ぬという。

 

 理由は邪神の力に目覚めたわたしがあなたを殺してしまうからだ。

 

 マジで?


 ……最悪じゃん。


 でも。


 そんな未来だって変えれると思う。


 どんな最悪な未来でも、二人ならなんとかなるような気がする。


「二人の物語はこれからだよ」


 ――そう言いながら、わたしはあなたの手を握った。

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