第43話魔眼に目覚めて

 ある日、僕の右目は魔眼が使えるようになった。


 魔眼というのは対象とする相手の未来を覗くことができる便利な力だ。


 学校が終わってから僕は、さりげなく君に話しかけてみる。


 すると僕たちは将来付き合っている未来が見えた。


 やった! 嬉し過ぎて死にそう!


 それからしばらくは君の未来を覗いてはニヤニヤする毎日が続いた。

 

 だが、そんな日々は長く続かないことがわかる。

 

 ある日を境に、君との未来が見えなくなったからだ。


 異変を感じた僕は探りを入れてみる。


 すると一カ月後に、君が事故で死ぬということがわかった。


 さらには僕が助けた場合、君は助かるが僕が死ぬというバッドエンドな結末だった。


 どうしよう……。


 あの手この手を探ってみるが、どうやっても君か僕が死ぬ結末しか見ることが出来ない。


 悩み抜いた結果、僕は一つの結論を出す。

 

 君を助けて、僕が死ぬ未来を決断した。


 ただし、残りの人生をなにもせずに終わらせることはしない。


 それまでの僅かな日々は、思い出を作ることにする。


 最期の日が迫る中、僕はなるべく君に話しかけることにした。


 それは何気ない日常の会話にすぎないけど、そんな当たり前の毎日が過ぎていく。


 ――そして運命の日。


 君は学校が終わって、教室を出た。


 この後、いつもの帰宅ルートで必ず車が突っ込んでくる。


 問題のポイントで君を突き飛ばして、僕は死ぬハズだった――。


「尾行、バレてるよ」


 そのとき。


 君が突然振り返り、ガチガチと震える僕の腕を掴む。


「あなたが願ってくれたから、未来は変わったわ」


 そう言って、君は自分の左目を僕に晒した。


「魔眼に目覚めたのは一人じゃない」


 そう言って小さく笑っている。

 

 束の間の安堵に膝から崩れ落ちた僕を見て、君は笑顔でこう続けた。


「二人の物語はこれからだよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る