第41話ドラゴンマスターと城の姫

 僕は人呼んでドラゴンマスター。


 悪の竜王の呪いにかかった姫を救うため、こうして旅を続けている。


 なに? 変な設定で遊んでるコスプレ野郎だと? バカを言え。


 この伝説の剣(発砲スチロール)と伝説の盾(段ボール)が目に入らないのか?


 伝説の職人(美術部の友人)が一晩(徹夜)で作り上げた至高の武器だ。


 勇者以外がさわれる代物ではない。


 竜王の城(学校)に向かう途中、一人の少女が泣いていた。


 連れの友達に慰めてもらっているようだが、きな臭い予感がして話し掛けてみる。


「どうしたんだい?」


 すると少女の連れが答える。「彼氏に裏切られたの」と。


 どうやらその彼氏は、学校……いや、城では有名な浮気者らしい。


 ぐぬぬ……懲らしめねば。


「案内してくれ」――そういって少女の手を掴み、僕は竜王の城を目指す。


 相手はかなりのイケメンだ。


 下手をすれば命を落とすかもしれない。


 僕は覚悟を決めて竜王の間(B組)へと乗り込んだ。


 するといきなり竜王を発見。


 貴様は罪のない少女を泣かせた。


 人間の皮を被って悪事を働くなど……今すぐその魂を封印してやるッ!


 僕が剣を振りかざすと、竜王は怯んでその場にへたり込んだ。


 周囲がざわつき始めたせいか、少女は僕の手を握って部屋を脱出する。


「まだ決着はついてないぞ!」と怒る僕を見て、少女は「あなたバカなの!?」と言った。


 最初は怒っているようだったけど、次第に少女は笑い出した。


「あーあ、ほんとバカらしい」と言ってお腹を抱えているが、とりあえず呪いは解けたようだ。


 君は実に晴れ晴れとした表情をしている。


 あれ? その輝くような表情……ひょっとして僕が探し求めていた姫というのは君では――。


 ――――


 僕は人呼んでドラゴンマスター。

 

 悪の竜王がいる限り、僕の冒険は続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る