第38話愛スクリーム

 今日は学園祭。


 わたしはクラスの出し物でアイスクリームの屋台をやっている。


 普通に売っても面白くないからと、色々な味のバリエーションを揃えることにした。


 特に変わっているのは玉ねぎを生のまま混ぜ込んだ実験作!


 ……だけどこれはさすがにお蔵入りした。


 とにかくオススメは白と黒のごまアイスだ。


 ぜひ食べていってほしい。


 そんなアイデアが功を奏したのか、当日はたくさんのお客で賑わった。


 ディッシャーで掬ったアイスをコーンの上に載せていく。


 次から次へと入れ替わるお客の波に目が回りそうだ。


 隣でレジ係をしているあなたの顔を見ながら、この後の予定が上手くいくのか不安になってくる。


 実は以前より、あなたのことが好きだった。


 けれど直接言うのも恥ずかしいので、いつもは遠回りな接し方をしてしまう。


 ただの友達から先に行けない日々。


 この気持ちにケリをつけるために、学園祭というイベントを区切りにしようと計画を立てたのだ。


 想いを伝えて白黒はっきりさせよう。


 ――そして休憩時間。


 あなたを呼び出したわたしは「あなたのことが好きでふゅ!」と噛みながら白黒のアイスを両手で突き出した。


 答えがOKなら、あなたは白ごまのアイスを受け取るルールだ。


 しかし、ドジってしまったわたしは、このとき玉ねぎアイスを持ってきてしまう。


 すぐに手を引っ込めようとしたが、あなたは両方のアイスを奪い、バリバリと食べてしまった。


「だ、大丈夫!?」


 わたしは心配になって顔を覗き込む。


 そのアイスは試作の段階で失敗したんだ、マズイに決まっている。


 それでも全部飲み込んだあなたは、涙目になりながらわたしを見て、


「味なんてわかんないから!」


 ――そう言ってわたしを抱き締めた。


 …………。


 高鳴る心臓に、わたしは頬を紅潮させる。


 ああ、この腕の体温。


 わたしは今にも溶けそうだ。

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