第37話となりと買い物カゴ
学園祭の買い出しがあるからと言って、君は僕を外に連れ出した。
買い出しリストを片手にスーパーの中を歩き回る。
ちなみにカゴを持つのは僕の役目だ。
カートを持ってこようとしたら、それを無視して君は先に行ってしまった。
「あのさ……」
僕の声が耳に届いていないのか、玉ねぎやニンジンを容赦なくカゴに放り込む君。
ちなみに僕たちのクラスはアイスクリームが出し物だけど大丈夫だろうか?
これだとおいしいカレーが出来てしまう。
なんだか徐々に不安になってきた……。
「あ、あのさ……」
僕は声をかける。
すると「なぁに?」と満面の笑みで振り向いてきた。
そのひまわりが咲いたような表情を見ると、言おうとしていたことが喉で詰まり、つい「なんでもない……」と手を引っ込めてしまう。
それと同時に「じゃあ、これもお願いね」と君は牛乳をカゴに入れた。
僕は呆れた顔で視線を落としたまま、黙って君の後ろについていく。
それからも君は買い出しリストの商品をカゴに入れ続けた。
徐々に重くなるカゴ。
そろそろ手が限界だ。
痺れを切らした僕は「あのさ、カート取ってきていい?」と口を開く。
するとさっきまで笑顔だった君は、真剣な顔で「ダメだよ」とこちらに詰め寄ってきた。
鼻先が当たるほどの距離で、僕は再び言葉に詰まる。
するとなぜかカゴが軽くなった。
一瞬手を離してしまったのかと手元を見ると、君が隣で取っ手を握ってくれていた。
「カート持ってきたら一緒に歩けないでしょ?」
そう言いながら顔を覗き込んでくる。
僕は視線を逸らしたまま、落ち着かない様子でレジに並んでいた。
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