第36話今日はどの洋服にしましょう?

 わたしには密かな楽しみがある。


 それはあなたにわたしの洋服を着せることだ。


 学校では冷たい態度ばかりとってくるけど、洋服を着せる時のあなたはやけにしおらしい。


 なんか意外だけど、そのギャップがまた、たまらないの。


「さて、今日はどれを着てもらおうかしら」


 お部屋のクローゼットを開けると、色とりどりの洋服が顔を出す。


 今日もその中からあなたに一番似合うものを選んであげるわ。


 お花畑から四葉のクローバーを探すように、わたしの胸は高鳴っている。


 よし、この花びらみたいなドレスにしましょう。


 ちょっとサイズが合うか心配。


 だけど意外にも、あなたはドレスを着こなした。


 最近ウエストが細くなったせいかしら?


 最初はどの洋服もピチピチだったのに、もしかして密かにダイエットしてた?


 さすがに丈は足りないみたいだけど、それは仕方ないよね。


 そんなあなたは恥ずかしいのか、黙ったまま顔を横に向けている。


 フフッ、そんな仕草も可愛くて、ついハグしてしまった。


 それから二人で動画を観ながら時間を過ごす。


 世の中では物騒な事件が多発して、暗いニュースが飛び交っていた。


 でも、わたしには関係ない。


 こうして洋服を着せる度に、あなたと一つになれた気がするから。


 ただそれだけで幸せ。


 もう何もいらない。


 ――ところで最近のニュースに、あなたの名前がよく出るのはなんでだろう?


 わたしは「物騒だね」と言って画面を閉じる。


 そしてニッコリと向き直り、白くて硬いあなたの指先に頬ずりするの。

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