第32話氷になったあなたを溶かす方法

 ここは氷の国。


 一年中真っ白な大地に覆われていて、雨の日も晴れの日も雪が溶けることはない。


 噂では城に住んでいる魔女が魔法をかけたせいだといわれているが、実際のところ謎だ。


 ある日のこと、私は城の見える丘にあなたを連れて来た。


 それは告白するためだ。

 

 いつか言おうと思っていたけど、今日という日にようやく決心がついた。


 どうしよう、露骨に緊張しているからバレてるかも……。


「あのさ……」


 口から言葉がこぼれた瞬間、あろうことかあなたが氷になってしまった。


 全身ピカピカのカチカチ。


 なんでこのタイミングに!?


 私は雪の大地でモフモフと地団駄を踏みながら城を睨む。


 きっと魔女のせいだ。


 魔法のせいで凍ったに違いない。


 こうなったら乗り込んでやるっ!


 あなたを元に戻してもらうために、わたしは城に潜入した。

 

 城内は人の気配がなく、無駄に広い。


 しばらく歩いていると大広間に豪奢な椅子が一つあった。


 そこには魔女が座っている。


 しかし、魔女というにはあまりにも若い。


 なんか退屈そうに頬杖を突いてこちらを睨んでくる。


 気圧されることなく、私はズカズカと詰め寄って叫ぶ。


「元に戻せ!」と。


 すると魔女は、


「ん、相手がいきなり凍ったって? あ~それ、照れ隠しだから」


 と、そんなことを言った。


 ……え?


 毛先を遊ばせながら、魔女は続ける。


「照れ隠しの魔法は自分を氷にできるのさ。こちらから熱い想いをぶつければ、そいつの氷は溶けるよ」


 そんなかんじで、魔女はあっさりと解決策を教えてくれた。


 つまりあなたは、自分の意志で氷になったのだ。


 それなら話は早い。


 思いの丈をぶつけてやる。


 両手の拳を握り、私は来た道を引き返した。


 ――丘に戻ると、私はあなたに向かって叫ぶ。


 すると氷は溶けるのだが、すぐにまた凍るの繰り返し。


 むむむ……。


 素直に想いを受け取れ!


 この国の氷を全部溶かす勢いで、私はずっと叫び続ける。

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