第23話跳ねる

 ある日突然、君は月の彼方に連れ去られた。


 なんでも不思議なたけのこをたべたことが原因らしい。


 ウサギのような宇宙人がやってきて、君を光で包んでいった。


 竹取物語のパロディかな?


 僕は空を見上げたまま途方に暮れてしまう。


 助け出す手段が見つからないまま、何日も時が過ぎる。


 君のいなくなった教室は、どこか寂しい。


 目を閉じれば今でもまだあのときの顔が瞼に浮かぶ。


 その年齢の割に大人びた横顔が印象的だった。


 だけど中身は子供っぽくて、そんなところもまた懐かしい。


 ある満月の夜――。


 空を見上げる僕の隣に、人の気配があった。


 ふと振り返ると、そこにいたのは人ではなく、いつか見たウサギの宇宙人だった。


 戸惑う僕に、月へ来て欲しいと言ってくる。


 わけがわからないまま宇宙へ連れ去られた僕は、月面の裏に建設された城に招かれた。


 豪奢な赤い絨毯の向こうにいたのは、なんと君だった。


 その身体は不思議なことに、少し縮んでいる。


 表情も少しあどけない。


「もとに戻っちゃった……」


 あの大人びた横顔は、不思議なたけのこを食べたせいだったのだろう。


 効き目が切れたみたいで、君は気まずそうに顔を伏せた。


 でも、子供っぽいからといって君が別人になったわけじゃあない。


 話し方も仕草もあの日のままで、なんだか安心する。


 とにかく久しぶりの再会で、何をどこまで話したらいいのか、お互いわからない。


 話したいことがたくさんあって迷う。


「ねぇ、月を案内してよ」


 僕がそう言うと、君は表情を輝かせて宇宙服を持ってきてくれた。


 静かな月面で二人きり。


 僕たちはウサギのように、跳ねる。

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