第21話今日の天気は飴

 今日は天気が悪い。


 朝から憂鬱な気分で雲を見上げ、傘を持って登校した。


 するとどうだろう、空から飴が降ってきた。


 雨じゃなくて飴。


 スマホでそれを撮影する人や、飴を拾って食べる人など、周囲はパニックになる。

 

 地味に頭に当たって痛い。


 そこで傘を差してみると、なぜか飴は止んだ。


 雲間から覗く光の筋に目を細め、僕は傘を畳んでみる。


 すると再び飴が降り出した。


 なんでだ?

 

 まるで僕の動きに合わせているかのような空の反応に戸惑う。

 

 それから数時間後、この現象が全国で起きていることが明らかになった。


 一カ月後。


 ついに天気予報で『飴』という表示が出されるようになった。


《関東地方は午後からグレープ味が濃厚で――》とかいうシュールなキャスターの解説を聞き流しながら、僕は学校へと出掛ける。


 教室から外を眺めていると、グラウンドに君の姿があった。


 大きく両手を広げて「ぶどうはもう飽きたーっ!」と空に叫んでいる。


 最近のグレープ率に不満があるのだろう。


 するといきなりバラバラと音がした。


 にわか雨ならぬにわか飴だ。


 あまりにも集中的な降り方に、君は頭を押さえてその場にしゃがみ込む。


 大変だ、怪我をするかもしれない。


 僕は咄嗟に傘を差してグラウンドへと駆け出した。


 外に辿り着くと、降り注いだ飴の上に君が倒れている。


 大丈夫だろうか?


 そっと身体を起こしてみると、笑みを浮かべた君がコロコロと口を動かしていた。


 僕が不思議そうな顔をしていると、君は僕の口に飴玉を放り込む。


 味わってみると納得、笑顔の理由がはっきりした。


 まさかのにわかオレンジだった。

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