第17話ケンカした二人と、盾からはじまる物語

 学校の帰り道、僕は宝箱を見つけた。


 誰もいない空き地の真ん中に一つだけ置かれている。


 その大きな宝箱を開けると、中から盾が出てきた。


 なんだこれ?


 宝石や装飾が施された、随分と豪華な作りだ。


 よほど価値のあるものに違いない。


 誰かが落としたのだろうか?


 しかし落とし物にしては不自然すぎる。


 なにより怪しい。


 とりあえず交番に届けよう。


 持ち上げてみたものの、しかしこの盾は重い。


 仕方ないから一回置こうとしたけれど、なぜか手から離れない。


 どういうこと?


「おめでとう。あなたは選ばれし勇者よ」


 声のほうに振り返ると、キリッとした表情でこちらを見る君の姿があった。


 この間ケンカしたばっかりで気まずい。


 もしかして嫌味でも言いにきたのか?


 というか、勇者ってなんだよ?


 そんなことを思っていると、「冒険の始まりよ!」と叫んで、君は歩き始める。


 いや、勝手に話を進めないでほしい。


 どうやら落とし主を探すようなことを言っていたので、ひとまずついて行くことにした。


 ところが隣町に入ったところで事件は起きる。


 ドラゴンが暴れていた。


 いつからこの世界はファンタジーと融合したのだろう?


 そんなツッコミを考える間もなく、ドラゴンは口を開いて攻撃態勢。


 灼熱の炎は僕たちへ向けて、一直線に飛んできた。


 逃げようとしたが、そこで君が転んでしまう。


 ――絶体絶命。


「クッ……ええいッ!」


 僕は無意識に君の前に立ち、盾を構える。


 そのおかげで迫り来る炎から身を守り、なんとか二人は助かった。


 すると突然、炎を浴びた盾が弾けて、装飾の宝石が宙に浮く。


 それは目も眩む閃光を放ち、光を浴びたドラゴンは蒸発してしまった。


 …………


 辺りはしんと静まり返る。


「だ、大丈夫!?」


 と言って僕が駆け寄ると、


「あ……うん。ゴメン」


 と、君は一言漏らした。


 ケンカしていたこともあってか、謝られると反応に困ってしまう。


 とにかく僕も「ゴメン……」と一言返した。


 こそばゆい空気がしばらく流れる。


 そんな中、倒したドラゴンの跡から、大きな宝箱が出現した。


 僕たちは顔を見合わせ、開けるべきか悩む。


 やがて「どちらが開けるか?」という話になったが、


「仲直りの印に、二人で開けよう」と、僕は言う。


 君も静かに頷いた。


 さぁ、覚悟は決まった。


 宝箱の中には何が入っているのだろう?


 なんだか新しい冒険の予感がする中、僕たちはゆっくりと手を伸ばした――。

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