第14話塔の上で助けを求める本当の理由

 君は塔の中に閉じ込められている。


 どこかのおとぎ話でありそうなシチュエーションだが、ここは日本だ。


 現代社会において塔って……。


 一体どこのお姫様だよ。


 ガン無視しようと思ったけど、君は「助けてくれ」とスマホから催促してきた。


 ぶっちゃけ警察に連絡しろよと思ったけど、わざわざ僕を指名したのには理由があるらしい。


 内容までは教えてくれなかったが、クラスメイトを無視するわけにもいかない。


 僕は渋々、塔のある場所へと向かった。


 長い時間歩き続ける。


 目指すは山の奥。


 森を抜け、谷を越え、川に流され――


 やっとの思いで問題の塔に辿り着いた。


 疲れた……。


 もう帰りたい……。


 そう思って踵を返そうとしたら。


 遠目に見える塔の窓から、誰かが手を振っているのが見えた。


 君だ。


 ご丁寧に真っ白なシーツを旗のようにはためかせている。


 連絡をとってみたが、山奥のせいか電波は一ミリも入らない。


 君のほうを双眼鏡で覗くと「こっちへきて」と手招きしている。


 ……仕方がない。


 僕は息を切らしながら、塔の場所まで歩いた。


 そしてやっとの思いでたどりつく。


 ――が。


 塔の真下まで来たとき。


 上から君が落ちてきた。


 ――――!


 一瞬のことで頭がパニックになり、無我夢中で身体を受け止める。


 すると受け止めた君がふわりと浮いた。


 なんと君が身に付けている腕輪が、反重力装置なのだという。


 ウソだろ?


 君は「研究は成功した!」と喜んで、僕の身体を抱き締めた。

 

 いや、わけがわからない……。


 というかいつの間にそんな発明してたんだ……。


 聞くところによると、この塔は研究をするために建てた秘密の場所だという。


 いろいろツッコみたいけど、それよりいつまでハグしてるの?


「…………」


 人目が気になったが、山奥にいるのは僕たち二人だけ。


 しばらくどうしていいかわからず、僕は狼狽える。


 ただ、研究に成功した君はとても嬉しそだ。


 ご褒美として「しばらくこのままでいさせてほしい」と言ってるけど。


 その装置で遊びたい僕は、君をお姫様抱っこしたまま塔のてっぺんに上った――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る