第11話スパイはあなたの秘密を知る

 あなたの家から極秘の資料を盗んで来い。


 それがわたしに課せられた使命だ。


 普段はふつうの女子高生だが、しかしその裏ではスパイを生業としている。


 任務中の無駄口は厳禁。


 作戦中は通信機がオンになっているので、上官がわたしの言動を監視している。


 下手をすれば始末されかねない。


 わたしは死にたくないので、とりあえずあなたの家を目指した。


 現場に到着すると、二階の窓から颯爽と侵入する。


 机の引き出しに手を入れて、問題の資料を取り出した。


「絶対に開けてはならない」と言われていたそれを、専用のケースに入れる。


 慎重に辺りを警戒しながら、再び窓から飛び出した。


 ――ところが。


 屋敷の中庭に着地した途端、周辺の至るところから唸るような警報音が轟く。


 どうやら赤外線のセンサーに触れてしまったようだ。


 腹を空かせた番犬や、屈強な黒服がわらわらと足音を響かせる。


 捕まったら終わりだ。


 わたしは調べておいた脱出ルートを辿り、吊り橋の方へと駆け出す。


 道なき道を追われながらも、わたしはなんとか目的地へ辿り着いた。


 しかしそこで待っていたのはあなただった。


 吊り橋の向こうで、構えた銃口をわたしに向けている。


 高校生がそんなもの持つなんて物騒だ。


 銃口に気をとられていると、うっかりケースの資料を落としてしまった。


 バラバラと中身が露わになる。


 それを見た瞬間、わたしは思わず目を見開いた。


 資料と言っていたものは、全部わたしに宛てたラブレターだったからだ。


 あなたは動揺して手紙に手を伸ばすが、こちらに走ってきたせいで吊り橋を激しく揺らす。


 朽ちかけていた縄は切れ、落下した吊り橋もろともわたしたちは川の底に沈んでいった。

 

 ――しかし。


 激流に呑まれたものの、わたしたちは一命を取り留める。


 咳き込むあなたを引き上げて拘束すると、わたしは上官からの通信を切った。


 沈黙が満たす中。


 わたしは尋問を始める。


 さぁ、答えてもらおう。


 わたしのドコがそんなに気に入ったのかな?

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