第7話分裂した私と、選ぶあなた

「ここには私が三人いる。さて、あなたは誰を選ぶ?」


 ある日、私は分裂した。


 身体が三つに分割するんじゃなくて、私が三人に増えた。

 

 しかも身長とか心はそのままのサイズで。

 

 こんなことがあっていいの?

 

 だからあなたも困り果てた様子だった。

 

 そりゃそうだ。


 だってあなたの彼女が三人になってしまったんだから。


「「「さあ、選んでちょうだい」」」


 三人分の圧があなたに伸し掛かる。


 三人から一人を選べというのだから、たまったもんじゃない。


 同じ人間なのに、思考はバラバラ。


 一人が三つに分かれるなんて、ややこしすぎる……。

 

 ああ……。


 あなたは本当に困った様子だった。


 見てるこっちが気の毒になるほどに。

 

 三人いるからハーレム!


 ……なんて楽観的なものじゃない。


 頭を抱えてしゃがんでいる。


 そんなところがあなたらしい。

 

 …………。


 けっきょくあなたは、三人の中から一人を選ぶことができなかった。


 私たちはとりあえず、家に帰ることにする。


 三つ巴バトルは持ち越し。


 明日また、話し合おう。


 ――そして翌日。


 私はあなたを見て唖然とした。


「「「やあ。結論が出たよ」」」


 朗らかに微笑むあなた。


 その身体が三つある……。


 つまり、三人になっていた。


「これで大丈夫」


 ――って、言ってるけど。


 いやいや、数の問題じゃない。


 とりあえずあなたの思考もそれぞれバラバラみたいだけど。


 どの私を選ぶかで議論になっている。


 三対三で、話し合いは続く。


 長い長い話し合い――。


 ……ま、互いを見つめ直すには、いい機会なのかもしれないね。

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