第136話 立場はあれども、私怨で動く者達
突発的な事象を引き金とした情勢の変化もあり、遠征中の身である騎士国の面々が当惑していたかと言えば…… 実はそうでもない。
福利厚生の名目で嗜好品を取り扱っている
「ディノ君、美味しそうなドイツ菓子を買ってきたんだけどさ、一緒に食べる?」
「女狐殿が趣味で作らせている
「もうッ、相変わらず回りくどいわね。要るの? 要らないの?」
菓子包を掲げて可愛らしく頬など膨らませるリーゼに迫られ、
(常在戦場というか、戦時下の筈なのに緊張感を維持するのが難しい……)
ぐいぐいと踏み込んでくる
この遠征に際してもリグシア領と敵対していた頃のグラディウスを四騎、“滅びの
やや
「ふぐッ!?」
「なんでいつもネガティブな方向に沈んでいくかなぁ」
“手間の掛かる奴め” と呟き、抗議のため開かれた口に一切れの “ビーネンシュティッヒ” を突っ込んで封殺する。
香ばしいアーモンドのフロランタンに覆われた表面を反射的に噛めば、パン生地に挟まれている濃厚なバタークリームが溢れて
「…… いきなりは止めろ、リゼ」
「ふふっ、そんな顔で言われてもね~♪」
眉を
それを平然とやってのけた
「なに照れてんのよ、色々と
「ぐッ、また誰かに聞かれたら、誤解されそうな事を……」
因みに認識が浅いと騎士候のみで構成される小国リゼルの組織構造は “鍋の蓋” に見えるが、家柄と過去の功績によって序列が定められているので、名門たるセルヴァス家の跡取り息子は無駄に身持ちが堅い。
「何故、頭を撫ぜる? 若干の屈辱を感じるぞ」
「えっ、いや…… 何となく、ね」
その発端になったリグシア侯爵の嫡男セドリックは魔道具の首輪を
彼は
「ッ… ぅ……うぅ」
「がっつくと、喉に詰まるぞ… って、聞こえないか」
「
見張り役の一人が雑談を交わしながら、置いてあった革水筒を蹴って近くまで寄せてやると、哀れな虜囚は拾い上げて中身の水を
異形の侵攻を看過したハイゼル卿の血族が
「夜間の当番、お疲れ様」
「館のメイド達が御茶を出してくれるみたいだぞ」
「身体の芯が冷えているから、それは有難い」
「まぁ、部隊長への連絡が先だけどな」
室内に詰めていた同輩達の
特段に何かあった訳でもなく、冬眠前に餌を求めて徘徊している熊を見かけた程度なので、単独行動は控えた方が良いと
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