第114話 立つ鳥は跡を濁さず、全てを灰燼に帰すもの
「おいッ、まだ騎体工房のグラディウスは来ないのか! 発生源の精霊門を潰さないと収拾が付かないぞ!!」
「“冷静に” よ、中隊長。熱くなりやすいのは賭博だけにしてね」
年若くとも家柄で出世したリグシアの将校クルトを
皮肉にも、
「グギィイッ!?」
「よしッ、次!!」
威勢の良い声を上げた彼女は銃床内部の
それを右肩に受けた小型と
「グッ、ウ…ゥ……」
「流石、ベルタさん!!」
「凄まじいですね、新式の七連発銃」
「
前衛を務める槍兵越しに垣間見た後衛達や、断末魔の
「駄目、局所優位性が無いから前線を維持できない、身内の死体を無駄に増やしたくないなら後退すべきね」
近場にいたクルトへ木箱の足場を譲り、少なくない数の兵が石畳に
僅かに頬を
他にも
「ッ、陣形を維持したまま
「ん、素直で宜しい。私達だけが
「偶々、待機中だったのが自部隊という時点で最悪ですよ、本当に……」
「「「ギャウゥ!?」」」
「「ウガァアッ!!」」
着弾と供に悲鳴を上げた獣主体の怪物達が
要所を金属部品で護られた岩石の躯体に比して、大振りな両腕には格闘用ガントレットが装着されており、その一撃を貰ってしまうと惰弱な人間の身体は衝撃で跡形もなく破裂するだろう。
頭上より叩き潰されるならまだしも、剛腕に薙ぎ払われたら被害は甚大だ。
「んー、もう無理ね、対処できる範疇じゃない」
「ど、どうしたら良いんだ、ベルタ!!」
「自分達の生存を優先しましょう、なるべく領民を逃がしながらね」
それでも意識を切り替えた彼女の的確な指示により、追い
「うがッ、ぐぶ……ッ…うぅ」
「な、な、何で……」
伝承に聞くエルフのような姿へ変わっているが、リグシア領の開発責任者である
そんな侍女は視線さえ向けず、
「立つ鳥跡を濁さずと言いましょうか、ファウ様が与えた先進技術の隠滅を命じられましたので……」
猿真似の上手い
自種族の
「開発及び設計資料に加えて、貴方達も処分の対象… 申し訳ありませんけど、安らかに眠ってくださいな、皆様」
「うぁ、や、止めて… ぎッ、がぁあ!」
「「ッ、うぅ…ぁ…………」」
もはや抵抗する余力のない者達が魔獣どもに
『くそがッ、動け! 何とかならないのか!!』
『… 多分、魔導核に細工されてたのよ、どうしようもないわ』
ふらりと現れた笹穂耳の侍女は初動で魔力波を放射したのみに過ぎず、それだけで
工房内に駐騎していた他の二体も同様らしく、接続中の念話装置は取り乱した僚友達の声を伝えてくる。
『他人の心配してる場合かよッ!!』
『これじゃあ、私達も棺桶に入ってるのと同じね』
『あぁ、胸部装甲を解放できないし、転移の魔封石も抜き取られてやがる』
『大型種が来たら、一巻の終わり……』
次は我が身と凄惨な光景を眺めていたリグシアの操縦者らも、抜け目ない侍女が呼び込んだ巨大ゴーレムの餌食となり…… 鋼鉄製の手甲に覆われた剛腕で、騎体ごと念入りに叩き潰されてしまう羽目になる。
その途中で感覚共有を復旧させ、死にゆく者達の苦鳴を楽しんだ悪趣味なシータは屋根や壁が崩れて、鉄骨剥き出しとなった工房内を満足そうに見渡してから広場へ引き返した。
城壁の外に至れば約四十体まで増えた格闘型や、術師型の岩人形が北側以外の大通りを
大混乱になっている街中と異なり、蓄えた星の力を使い果たした精霊門の前には白エルフの戦士らが駆る二騎の “
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます