第113話 執心の行き着く先
一方、執務室に取り残されているハイゼルは虚空へ消えた異質な風魔法に即応して、上着の下に隠れたホルスターよりパーカッション式の
ただ、どうしても引き金に掛けた指が微動だにせず、困惑した顔で酸欠気味な魚のように口を “ぱくぱく” させている。そんな無様とも言える姿を見たもう一人、銀髪を片側で
「ふふっ、特別に “発言を許可” してあげます、リグシア候」
「貴様ら…… 私の身体に一体何をした?」
「それはもう色々としていますが、何から教えてあげれば良いのやら♪」
「シータ、
悪戯心を
相方の
「もう貴方は死んでいるのです。数日前、敗戦の報告が届いた
「
「くだらん世迷言を抜かすなッ、
銃口を向けたまま首から下が動かない状態で怒鳴れども、まともに取り合わないシータは
「都合よく戦場に出てきたニーナ・ヴァレルを都市近郊まで
「これは… 記憶が……」
特殊な魔力が乗せられたラムダの
そこでのハイゼル・バレンスタインは容姿端麗な人外の侍女達が言うように殺害されており、今も存在している事自体が悪質な冗談の
「
「それこそ世迷言です… 高貴な白エルフが不浄の
「寧ろ、神の
さらに不都合な事柄を知覚できないよう様々な制約を課した上、表向きは自由な意志を与えた “成れの果て” が今のリグシア侯爵である。
聞く限りでは非常に有効性の高い、汎用的な蘇生術と思えなくもないが…… 強引に
「放置して変なタイミングで崩壊されても支障はありませんけど、ファウ様の御言葉を預かったので私達が出向いた次第です」
「でも、余り多くの時間は取れない… “生命の円環に戻れ”」
再度ラムダの紡いだ
崩れた右手ごと落下した拳銃が鳴らす残響を耳にしながら、まったく痛みなど感じないにも
「無念だ、己の失態に
帝国貴族の
それでも最後の瞬間を待つしかできないため、
自然の摂理に反する肉体は
「…… 何やら、永劫の森が恋しくなりました。手早く済ませて戻りましょう」
「ん、同意する、人の造った都市は活気があっても息苦しい」
精神的にも物理的にも合わない環境から脱却して、生き残った自種族が “滅びの
彼女達が歩を進める先の中央広場からは剣戟や銃声、魔法による破砕音も風に乗って聞こえてきており、
広場と隣接する商業区画の市場付近にも浸透を許してしまい、魔獣の鋭い爪牙で無惨な死体に変えられて、捕食される犠牲者の数は加速度的に増えていた。
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