第99話 鬱々する領主令嬢とまつろわぬ者
女狐ことニーナの祖国ドイツで西暦1898年に著名な技術者や企業を集め、航空運輸の時代を切り開いたツェッぺリン伯爵に因んで名付けられた空飛ぶ船が減速して、ゆっくりと円滑な動きで高度を下げていく。
約1kmほど離れた草原に座り込み、ぼんやりと着陸の様子など眺めていたエリザは視線を降ろして、問答無用に騎体より
「ライネルの操船技術、確実に上がってるわね」
「どうかな、私はミリアの波動制御が慣熟してきたように見える」
互いに手ずから指導した後輩二人を褒め合い、口元を少し綻ばせたアインストが
「騎士隊の皆、他兵科の部隊と合流しているみたいだけど… 私達は良いの?」
「最近、働き詰めだったからな… 偶の息抜きくらい罰は当たらないさ」
「とか言って、撃破されたのが恥ずかしいだけだったり」
指揮官騎のベガルタL型を大破させている手前、中途半端な言い訳は生産性のある行為に該当しない。
(それでも弁明が脳裏を
最悪、ニーナの性格なら
どうせ領軍本隊へ帰参したら事後処理に忙殺されるのは明白な事もあり、
「ちょッ、うひゃあ!?」
先ほどの意趣返しか、巻き添えにされて寝転がったエリザは至近よりジト目でアインストを睨み、耳元で苦情を並べ立てるも… 聞く耳持たずに瞑目されてしまう。
仕方ないのでもぞりと
そんな二人と対照的に少々離れた草地では、ゼファルス領主の女狐殿が陣頭指揮を一手に引き受けていた。
「ニーナ様、被害状況の確認終わりました。
「ありがとう、読ませて貰うわね」
「ライゼス卿が自国へ投降した捕虜と
「それは野営地を構築してからにすると返答なさい」
時折、
操縦席が潰されているのを視認した時は焦燥に駆られたが、胸部装甲を強制開放して確かめた際に無人だったので、騎体に搭載された転移の魔封石を使う余地くらいはあったのだろう。
「もう本隊に帰還して良い筈だけど、何処で油を売ってるのよ」
思わず零れ出た愚痴を
「大破が四騎で六名戦死、中破が六騎で重軽傷者は十二名… 戦いで人が死ぬのは必定、けれど未来の破滅に
「でも、私のような
帝国内に
段々と
小一時間ほど経った頃合いで仲睦まじげなアインスト達が戻り、多忙な状況から解放された彼女が十数名の
「断るッ、幾ら丁重に扱われても、俺が貴様らに協力することは無い」
「レオ、それは駄目… 騎士の矜持でお腹は膨れない、というより殺される」
小柄な魔導士に
「斬り結んだ時の感触で分かっていたが、やはり無理そうだな」
「ん、敵意が露骨に伝わってきてたから……」
こくりと頷いた
若干の困惑を浮かべた捕虜達や、思案する盟友らの姿を認めたニーナは薄く微笑み、
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