第98話 女狐不在なれども、狸娘はここにあり!
『わゎ、なんか皆に凄く見られてるよ、クロード』
『どうやら、最後の一兵まで殺し合うつもりは無いようだな』
時折、
やや気後れしていると、自領優勢の状態で暫定的な停戦に応じた友軍より、小破した
『西方派遣軍第二中隊長のエックハルト・フェルダ、本隊に於いては騎士長の補佐を務めております。戦場
『構わない、堅苦しいのは好きじゃないからな』
率直な態度で続きを
先ず思わぬ長距離砲撃により、領主ニーナ・ヴァレルが乗船する飛空艇 “
『結果、自分が臨時的に指揮権を預かっているのですが、敵将を討ったのは貴国の双剣
慇懃な態度の裏側に責任を転嫁する意図など感じてしまうが、リグシア側にも主たる将校は残っていない様子なので、
『陛下、ここは…… ですから… を優先しましょう』
『なるほど、国益に叶う』
『うぅ、私の幼馴染みが腹黒い、たぬたぬの狸娘だよぅ』
『ふふっ、褒め言葉だと思っておきますね、レヴィア』
どの騎体も大なり小なり損耗しており、当初の1/5程度まで数を減じて劣勢となっているため、よもや断るまいと思いつつ言葉を紡いだ。
『これ以上、殺し合いを続けるなら
『…… 不本意だが、受け入れさせて貰おう』
『こっちも犬死はしたくないんでね』
ある意味で予定調和な返答に理解を示し、抑揚な態度で自騎の首を縦に振らせてから、偶には王らしく威厳を込めて言い放つ。
『当代騎士王の名に
言外にゼファルス領の女狐殿を関与させないよう宣誓して、貴重な人材を身内や騎体ごと抱え込む思惑も籠め、亡命オプション付きの待遇を確約する。
迂遠な言い廻しに引っ掛かりを覚えたリグシアの騎士や魔導士らも、
他方、ゼファルス勢の間では判断の移譲に関して、“早計だったのでは?” という空気が漂い始め、無言の非難がエックハルト中隊長へ突き刺さる。
『うぐっ、申し訳ない、クロード王… 言い
『余り期待してくれるなよ、舌戦は不得手なんだ』
少なくともニーナに勝てる気はしないので軽くあしらい、投降してきた皇統派のグラディウスに駐騎姿勢を取らせた上で、全員乗騎から降りるように指示した。
疲れた表情の操縦者達が備え付けの昇降用ワイヤーペダルで平原に降り立つ姿を眺め、彼らの騎体が潜在的な脅威に該当しなくなるまで待つ。
円滑に推移していく状況を見守っていれば、警戒の目を光らせていたディノが何やら見つけたのか、改造騎ガーディアの片手を動かした。
鋼の指先が向けられた先には草葉色のフード付き迷彩外套を羽織った斥候兵が
『ゼノス団長、最低限の安全は確保されていると考えても?』
『そうだな、もう戦闘は終息している』
短い念話を交してからベルフェゴールに首肯させると、少しだけ見覚えのある相手は
計算され尽した時間差により、最後は
『後方支援部隊の呼び寄せですか?』
『あぁ、森の浅い部分に潜ませている』
逆にゼファルス側はどうなんだと確認したら、少々言葉を濁したエックハルト中隊長は
『ん~、つまり発煙弾以外の連絡手段があるんだね』
『いや、その……』
敢えてお互い踏み込んでいないにも
信号弾の系統は位置を特定されるリスクがあるので、ニーナに交渉を持ち掛けて一台貰えないかと思案する。
(日本と同じく、リゼルの技師らは模倣と改良が得意だからな)
密かに
それが済めば足の遅い荷馬車を有する
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