第93話 もっと良い騎体に乗りたいだけの人生だった by 新任騎士のリタ
激しい衝撃が騎体を
『ぐうぅッ!!』
『きゃああぁッ!?』
レヴィアの悲鳴が
『良いな、貴殿。命を削り合うに値するッ!』
『あぅ、クロードのスイッチが……』
何やら動力制御を担う赤毛の魔導士娘が不満げなのに反して、騎体に内蔵されている魔導炉 “
『ッ、押さえ… 切れないわ』
『馬鹿なッ、
『女狐殿が鍛造して、双子エルフが研ぎ澄ませた
先史文明の “
さらに間髪入れず無骨な左拳のボディブローを胸部へ喰い込ませたが、初撃を受けた時点で重装騎は回避の動作に移っており、厚い装甲を多少陥没させて
その直後、
『やってくれるなッ、ベルトラン卿!』
『貴様の
気勢と共に重装騎が左掌を
不意打ち気味な近距離射撃ではあれども、守勢に廻れば次の行動が遅れると本能的に理解して斬り込み、魔法の核になる部分ごと鋼鉄の指を
『ぐぅ!?』
『うぁ…』
短く呻いた操縦者らは重装騎の右足を下げさせて半身となり、左肩の大盾で追撃を警戒したが、
無理やり手堅い防御をこじ開け、渾身の左拳を再度胸部へ打ち込んだ刹那、
先程の打撃で損傷していた装甲は
『無情だな、手加減の余地がなかった』
『…ん、戦いだからね』
状況が少しでも違ったなら
中々に良い騎士達だったのを惜しみつつ、近接格闘の間も意識は配っていた周囲を改めて
最後までエイドス領所属の敵騎と戦っていた満身創痍のクラウソラス三番騎も、何とか相手を追い詰め… 倒れ込むように突き出した鉄剣で腹部装甲を貫いた。
『身内の損害は中破と大破が一騎ずつか……』
『すまん、新任騎士らに経験を積ませたかったんだがな』
『助勢する機を
朽ち果てたグラディウスの
『生きているか、二人とも』
『うぅ、無念です。旧式騎のせいで死んじゃう… もっと良い騎体に乗りたいだけの人生だった』
何処となく声音に痛々しさがある以上、操縦席の内部に飛散した破片などで負傷しているのかもしれないが、
取り敢えず一息吐けば、相方の女騎士に呆れた魔導士の溜息と重なる。
『不覚を取ったのは未熟が原因です、俺達のことは捨て置いてください』
『騎体は後で回収する。放棄していい、転移の魔封石を使え』
『承知しました、リタと一緒に森側へ脱出します』
『草葉の陰から皆の活躍を見守ってますね』
“墓の下” を意味する
図らずも魔封石の発動を確認した後、風に乗ってきた鉄塊を打ち合う硬質な音に誘われ、数百メートル先の平原で交戦しているリグシア領の軍勢に
『
『兄様、それでは女狐殿の手勢を巻き込んでしまいます』
『あはは、
『精々、距離を詰める際の手助けが可能だった程度です』
後方よりスヴェルS型二番騎を上がらせてきた琴乃の声がロイドとエレイアの会話に割り込み、同型一番騎からの言葉も添えられて僅かな沈黙が降りる。
『…… また白兵戦が確定なんだね。うん、分かってたよ』
『もう一仕事だな、レヴィア』
休む暇もなく数的劣勢を強いられる友軍のため、継戦できそうにないクラウソラス三番騎にも退避を指示してから、健在な八騎を率いて加勢に向かった。
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