第81話 元老院議会の裏側で……
道すがら帝国の状況次第では騎士王祭の中止も考慮すべきと副騎士団長が言い出し、祭りごとの好きなゼノス団長が嫌そうな顔で “せめて延期にしてくれ” と駄々を捏ねていた数日後……
北東に位置するため “滅びの
招集された元老院の会期末を控え、自領へ帰還する準備なども整えた彼らは立派な樫のテーブルを囲み、設えられたソファーに深く腰掛けている。
「さて…… かなりの時間と労力を賭したが、
「皆の助力あっての事、有難い限りだ。
感慨深げに頷いたリグリア領主の表情は何処か硬く、水を向けた宰相のクリストフ公爵も何やら思案顔だ。
多数派工作が奏功して、ニーナ・ヴァレルの
「結局、表立って動くのはリグシア領とエイドス領のみ、大丈夫なのか?」
苦笑気味に疑問を挟んだ細身の貴族に向け、その対角に坐している精悍な貴族が僅かに瞑目して応える。
「一応、我がリンデンバウム領からも数騎を供与している。装甲に刻まれた自領の
「依然、西側の国境線には “滅びの
言葉を引き継いだ元老院議長のアルダベルト老が締め括り、各々の視線が意見を聞きつつも黙考していたクリストフ公爵に再び集まった。
皇統派の
「
「やはり異形の脅威がある限り、女狐殿は手元に援軍を戻し難いでしょうな」
最前線の状況に付け込むのは
その見解に大半の者達は静かに頷いて同意したが、用心深い宰相公爵は当該案件の首謀者にも言葉を投げる。
「確か、以前にゼファルス領とリゼル騎士国の間で禁止されている魔導核関連の技術供与があったと話していたな……」
「
巧妙に隠蔽された尻尾を掴むことはできずとも、手間暇かけた中核都市ウィンザードの夜襲を居合わせた騎士王に阻まれた経緯から、ハイゼル侯爵は揺るぎない確信を籠めて返答した。
ただ、それが事実ならゼファルス領と騎士国に密接な関係がある事となり、余計な不確定要素が増えてしまう。
「ヘイゼン候、依頼していた件は?」
「多忙の身
“
「仮に裏で繋がっていたとしても、実利を優先して見捨てるか……」
「もう既に技術供与は済んでいますからね」
「義理を立てても、手勢の損耗以上に得られるモノは無い」
「差し詰め、対岸の火事といった感じでしょうな」
周囲で交わされる言葉を聞きつつも、気取られない程度に失笑したヘイゼン侯爵は防衛線に近い中西部の土地を領有する
念のため身内の皇統派から疑われないようにリグシア領へ軍資金を貸し付け、騎体燃料の魔力結晶も融通している客観的な事実により、慎重なクリストフ公爵も “恐らく騎士国は静観する” という認識に一定の理解を示した。
「ご苦労だったな、
この場を
「首尾よく事が運ぶなら良し、返り討ちに遭うなら本人に泥を被らせるか……」
当然、派閥の
……………
………
…
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