第82話 猪突の女騎士 VS 寡黙な騎士 (ただし、模擬戦)
彼らの内、寡黙な騎士ザックスは寄り添っている魔導士のリネアを
「ん、順調そうでなにより、私も
「…… 先ずは目先の性能評価試験が大事だけどね」
これから壁外の騎体演習場で行われる模擬戦に集中して貰うためか、背後から魔導士の少年ヨハンが声を掛ければ、応じた彼女は綺麗な
「勿論、それも楽しみにしています。新鋭騎のスヴェルF型を任されたのは我がクラム家にとっても名誉な事ですから」
「だからと言って、手加減はしないがな」
「もうッ、ザックスは真面目すぎるのよ」
状況次第では角が立つであろう
(皆がレインのように単純なら良いのだけど)
内心で密かに溜息を吐き、近々起こり得るかもしれないアイウス帝国の内紛に際して、要職を含む
表沙汰にしておらずとも、魔導核の技術がニーナ・ヴァレルより供与されたと考えている者達は
因みに主要な整備兵に加え、王都所属の専属騎士や魔導士の多くは内情を察している側であり、必要に応じて戦地に
(できれば
下手を打てば城内だけの話で済まず、
やや表情を曇らせたリネアが思案しているとザックスの大きな手が伸び、慰めるようにポフポフと軽く叩いた。
「…… 何を懸念しているか分からんが、悩んで解決する
「はいはい、どうせ “時間の無駄” ですよ~」
どうしてこんな朴念仁に惚れたのかと悩みつつも王都正門を潜り、前を歩くレイン達に続いて防壁から数百メートルほど離れた演習場に辿り着けば…… そこには白を基調にして黒が混じる近接型の
狙撃型よりも要所に分厚い錬金製装甲を使用しているため、搭載魔導炉は双子エルフが関与した出力微増型である。
今日も小柄な双子達は操縦席に潜り込み、ピコピコと長い笹穂耳を動かして作業に勤しんでいた。
「ミア、ミラ、魔導士が来たぞッ!」
「「了解です、
スヴェル系統の三番と四番を割り振られた各騎から、似たようなタイミングで双子がひょこりと顔を出す。
それから遅れる事
「良いかッ、武器の刃等は装甲よりも柔らかい軟鉄製だが、余り羽目を外して騎体を壊してくれるなよ! 特にレイン、分かってるだろうな!!」
『うぐぅ、何故に私だけ名指しなのです』
『…… いや、
深く同意を示したヨハンの感情が身体に
対峙するザックスも三番騎の重心を落として、同じ得物を斜めに寝かせて持ち…… 開始の合図と共に背部バースト機構を噴かせ、低い姿勢で吶喊する。
『うらぁあああッ!』
『拙速なッ!!』
即応したレインは四番騎の左脚を
渾身の斬撃はハルバードの
『ぐぅ!』
歯を喰いしばって堪えようとするも、詰めてきたスヴェルF型の三番騎は既に右膝を上げており、すぐさま鋭い中段蹴りが繰り出される。
それを騎体腹部に受けて押し飛ばされ、再び間合いが開いたところで止めを刺すような一撃が放たれた。
『ッ、舐めるなぁ!!』
『ちょッ、レイン!?』
猪突猛進な相棒を
さらに流れるような動作で先端部の
『ぐッ、やってくれる』
『うぅ、痛い……』
人工筋肉経由の感覚共有で呻いたリネアの声を聞きつつも、ザックスは
されども
『ッ、決めさせて貰う!!』
『……
呟いた寡黙な騎士が三番騎の両腕を突き出させ、再度ハルバードの
それに留まらず、左拳を右斜めに突き上げながら腰も
「うきゃあッ!」
「ぐべッ!?」
“
慌てて立ち上がろうとしても後の祭りで、軟鉄製の
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