第40話 新たな局面へ
ただ、“ゼファルスの領主に
いざ事に及んだ際、ヴァレル家と急激に接近した西側三領地の貴族たちが妨害をしてこないとも限らず、中立派の動きも気になるため迅速に
「あの愚か者め、勝手に戦死して厄介な奴に
厳密に言えば、前当主の死後に
何やら呟き出した
「これから忙しくなるぞ、不本意だがな」
「すみません、襲撃で最優先目標を仕留めてさえいれば」
「元々、成功率は五分未満の任務だ、あまり気に病むな」
萎縮する相手に気さくな言葉を掛けてから、リグシア領の騎士長は自らの執務室へと引き返していく。
その去り行く背中に一礼し、レオナルドは旅程で疲れた身体を休めるため、兵舎に割り当てられた士官用の部屋へ向かう。
「お帰り、大丈夫…… じゃ無さそう」
扉の開く音に反応した彼女は軍装のインク染みを見て、不愉快そうに眉を
「ゼファルス領での失態を考慮したら、マシなものだよ。と言っても
「ん、一緒にのんびりする?」
「ははっ、それもありだな」
勝手に
「羽を伸ばすのは身綺麗にしてからの方が良い…… お風呂の用意はした」
言うが早いか、ずずいと着替えを渡された瞬間、領主侯爵に絞られている内に入浴を済ませてきたらしいエルネアから、
不意に出先では河川や湖で汚れを流していたに過ぎない自身が気になり、そそくさと浴室へ逃げ込んで身体を清めてから、狭くとも騎体専属の者達に許された個室の湯船で疲れを癒していく。
以後は
(あれでいて
「ファウ殿、俺のナイトシェードに何か異常でも?」
「いえ、昨日の報告から、さらなる強化を思いつきましたので……」
嬉しそうに彼女が手渡してきた設計資料を確認すれば、濃緑色の隠密型騎体の図柄に見慣れぬモノが一対生えていた。
「これは…… 複腕ですか?」
「そう、魔法行使時にも突飛な事態に即応できるよう、二対の腕を持った改造騎体ナイトシェード・
若干、自画自賛的に近接戦闘における四本腕の優位性などをファウが主張するものの、レオナルドが専属騎士として抱いた一抹の不安に関して、技師や整備兵達を
「普通の腕と同じく、人工筋肉経由で騎士が感覚的に操作しますから…… 本来、人間に無い二対目の腕は上手く動作するんでしょうかね?」
「錬成の際に該当部位の神経筋を増やし、より多くの末梢神経を含ませる方向で検討しましょう」
技術者同士が
(基礎性能が上がるのは構わずとも、俺自身が追いつけるかだな……)
中核都市ウィンザードで出会った
因みに異彩を放つ騎体でなくても、適性が
「ヴァルフ様も大変だな……」
これから謹慎という名の休暇を貰う青年将校が気の毒そうに呟く
他にも様々なリグシア領に属する者達がハイゼル侯爵の命令を受け、新たな画策のために動き出しており、未だ相応の期間が必要だとしても事態は着実に進んでいく。
そうした状況の中、帰還の途に着いたリゼル訪問団は特に大きな問題も無く国境線を越え、自国の土を踏んでいた。
受領した第二世代の騎体を囲み、荷馬車を率いて
騎体情報 ナイトシェード・
強襲任務に失敗したレオナルドの乗騎を開発者であるファウ・ザゥメルが大幅改良したカスタマイズ騎であり、四本腕を特徴とするイレギュラーな
複腕となった事で手数が増え、純粋な格闘能力が上昇しているものの、人工筋肉に含まれる末梢神経を経由した操作は難しいとの事だ。なお、頭部を飾る二本角に然したる意味は無いが、技師たちの拘りで付けられた模様で
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