第8話 偶には騒がなければいけない時もある
『クロード！』
『
言われるまでも無く騎体の右掌で雷槍の柄を
狙いは損傷した二番騎へ意識を向けた地竜の右
『うぉおおぉおぉッ！』
「グッ！？」
一瞬だけ反応が遅れた標的の太い
「ギァアァアァァアァアァッ」
絶叫を上げながら
『熱ッ！？』
『きゃぅッ』
騎体と同化した身体が炎の熱を感じ取り、思わず顔を
感覚まで連動するのは利点であり欠点だと思いつつも破損した雷槍を投げ捨て、素早く鉄剣を引き抜いて腰だめに構え、足掻く相手の眉間へ騎体ごと体当りしながら突き刺す。
「ガァッ…… ギィ、イァアァアアァッ！」
『うぉッ』
確かに
『た、単騎で大型竜種を仕留めたの、私達？』
『いや、奴の注意がロイド達に向いてたからだ』
『そう言って貰えると、少しは面目が立つのかな……』
『兄様は精霊門の核を破砕していますから、戦功一番です！』
いつも通り兄への気遣いを忘れないエレイアに内心で称賛を送り、彼らの傍まで移動して騎体の片膝を突く。
此方のクラウソラス四番騎も人工筋肉の一部が浴びた炎で損傷しており、無傷という訳では無いものの、当面の危機は
『…… その辺から大型種とか出てきたら、大変だな』
『ちょッ、変な事を言わないでよ！』
『まぁ、残りの大型種は団長たちが相手取っていますけどね』
『……どっちにしろ、此処は離れた方が良い。肩を貸してくれ、クロード殿』
双方騎体に損傷を受けた現状では、中型種以下でも脅威となり兼ねないため二番騎を支えて立ち上がり、水源の岩場から離れて大森林へ姿を隠す。
十分な距離を開けて遠目に様子を暫く
勢いづいた彼らが岩場に雪崩れ込んでその場を制圧したので、地竜ドレイクの亡骸を眺めて
『おいおい、騎体がボロボロじゃないかロイド、それにクロードも手負いか…… ふむ、精霊門と竜種を討ったなら、安い対価とみるべきだな』
『すみません、ゼノス様…… 預かった二番騎を中破させました』
申し訳なさそうに一言
『こっちは五番騎がディサウルスに腹を
『…… ルーディックとミリアは？』
極力感情を抑えた声で問うロイドに対して、団長殿は騎体の首を軽く左右に振らせた。
『わからん、戦闘中に確認する余裕がある訳なかろう。歩兵隊と魔術師隊を残してきている、今頃は後続の整備班も合流してハッチをこじ開けている
『そんな……』
動揺を含んだレヴィアの声が耳元で響き、戦えば被害は避けられないという当たり前の事実を実感していると、クラウソラス三番騎が適度な大きさに砕いた鈍色の塊を持つ様子が疑似眼球に
『浮遊多面体の欠片か……』
『あぁ、女狐殿がご執心でな、是非とも欲しいとの事だ』
恩は売っておく主義らしい団長殿の指示にて、破片数個が回収されたところで騎兵長のアルドが馬身を寄せ、一番騎に向かって大声を出す。
「団長、異形共は国境側へ
『
「了解だッ」
返答と同時に騎兵長が腰元のホルスターから単発後装型の信号拳銃を抜き、頭上に掲げて若草色の煙弾を射出した。
然程の時間を掛ける事無く、岩場周辺を警戒していた百数十名の騎兵がクラウソラスの下に集まり、先導する形で来た道を引き返し始める。
しっかりと馬上に混ざっていた斥候兵達を
他の戦死者も含めて手当や弔いを行った後、少し豪華な夕食と程々の酒が振る舞われて、
「騒がなければやってられないか…… 厳しい世界だな」
「でも、誰かが戦わないと座して死を待つだけになっちゃうよ？」
ちびりと小動物のように果実酒を啜るレヴィアの言葉はもっともで、国家や人々のために命を張っている連中は地球にもいたんだろう。
気が合う仲間で
「これ、凄く美味しいよぅ、エレイアが持ってきてくれたの」
「お邪魔させてもらいますね、クロード様」
「さっきは結構危なかったから、助かったよ」
何やら両手に皿と木製マグを持った銀髪兄妹も加わり、少々
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