第9話 束の間の安寧
暫く続いた砲撃に怯む敵を狙撃しつつ、後方から装甲師団の展開が完了したと報告が来た。更に戦車師団も来援し我々は補給等の為に後退した。
世論的にも士官候補生が死ぬのは宜しくない。幸い、ベテランが上手くカバーに入り戦死者は出なかったが、負傷者は数名でている。
つまり、予定では前線の空気に触れ、戦場とはどんなものか知ってもらうだけの予定が想定外の実戦経験を積むことになったという訳だ。
それは悪い物では無い。実戦経験は積んでいる方が良い。
殺しも経験してる方がいい。
と、彼女らの話は置いておき、入り込んだネズミを処理しなくてはならない。
時刻は深夜2時。須毛原とミハイルの3人でネズミが入った天幕の入口に控えているところである。俺とミハイルはサプレッサーを取り付けた二七式拳銃を構え須毛原は隙なく炭素鋼のナイフを構えている。
ハンドサインでスリーカウントでの突入を指示。
3秒後、天幕の中に入り、工作員の額に照準を合わせ撃つ。そのまま滑らせる様に2名を射殺しミハイルと須毛原がそれぞれ2名を仕留める。
「こちら、バーレイグ。無線封鎖措置を解除。ネズミ7匹の処理を終えた。」
『ご苦労大尉。3名をこちらで拘束済みだ。速やかに尋問に移るぞ。』
「了解。直ぐに向かいます。」
日本の陸海空軍に継ぐ第4の軍。大日本帝国情報軍。国家の諜報防諜と軍事部門を統合した新しい軍種だ。情報軍大尉としての階級も持つ俺や情報軍少尉の須毛原。ロシア帝国情報軍少尉のミハイルも組んだ後方拠点のここへのKGB工作員の捕縛殺害任務。
コソコソと嗅ぎ回っていることを掴んでいた為にダミーの機密を用意してまでの作戦。ミハイルはたまたま俺の元に派遣されてきた為に上官が巻き込んだ形だ。
情報軍の下士官兵達が後始末をするのを後目に拠点の隅に位置する倉庫へと向かった。
倉庫の入口のスキャナに掌をかざし埋め込まれたチップが読み込まれると扉が開く。中からバラクラバを被った兵士2名が俺達を確認する。左右に道を開けると強化外骨格のパワーに任せコンテナをずらし地下へのハシゴを下っていく。
「ご苦労大尉。須毛原少尉もご苦労だったな。」
「お久しぶりです、田中少佐。」
睡眠薬を注射されている3名は自殺用の毒やらも取り外され、関節も外された状態で転がっている。
薄暗い室内にはアサルトカービンを構える3名の情報軍の兵士と少佐と我々のみ。
「起きたか。」
覚醒剤を注射され、目が覚めた3名を尋問官が尋問する。
話によると功績を焦ったKGBの大佐が動いたというが。
「ここら辺を管轄するプーチン少将がやらせるとは思えんが。」
抜け目ないアレのことだ。態と見逃した事は間違いない。
「政敵の処分か。陽動か。」
大佐の背後関係を洗うように部下数名に命令し、俺達は下がるように命じられる。
時刻は既に朝焼けの空。
欠伸を噛み殺し、自分の隊舎に戻る。
「大尉殿、本日は?」
「ああ、佐原か。怪我は?」
「ありません!」
「結構、本日は休暇だ。好きに英気を養え。明後日満州へ帰る。あ、後満州へ戻った時に貴官へは、准尉の階級が与えられる。よくやった。」
「ありがとうございます!」
複数の指揮下の小部隊を動かし、穴を埋める。士官候補生らは学生なので休暇を与える必要は無い。が、士官の我々は休みでは無い。明日には到着する予定の部隊に引き継ぎの文書を作り、仮眠を取った。
1時間後、身体を起こし食堂へと向かう。
士官食堂はがら空きで適当に座り定食を選ぶ。
「大尉、失礼するよ。」
「曽山中佐殿。」
「大尉、貴官は優秀な将校だ。将校連のパーティがある。それに参加して貰えないか?大尉のファンは多い。」
若手の優秀な参謀将校の集まりか。パーティと言っても勉強会の様な物。幸い、喫緊の職務がある訳でもない。今夜は参加することにした。
大日本帝國斯く戦えり 佐々木悠 @Itsuki515
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