第三話 特別演習
「A中隊集結完了!」
「B中隊集合完了!」
「C中隊遅れました!」
C中隊の中隊長は綾瀬彩子中尉。歳は少し上だが中尉としては同期だ。
「よろしい。これより演習内容を発表するわ。範囲は北方管区全土。私が麾下小隊を率いて索敵するから見つからない様に逃げ回りなさい。見つけたら、ペイント弾で観測射撃するわ。」
「少佐殿、期間と装備は?」
「フル装備に期間は1週間。何を持っていっても良いわ。」
「馬鹿ですか?」
「須毛原中尉、口の聞き方を考えなさい。誰が聞いてるかわかんないんだから。」
良いのかよ。
「10分間の打ち合わせの時間を与えるわ。」
退出して言った。
「おい翔也、綾瀬固まって動こう。大戦時の遺産が山のようにいるからな。」
軍用犬が大脱走した事件が起きた事がある。
数千に近い軍用犬が脱走し野生化。子孫を着々と増やしシベリアは犬の宝庫だ。
ちなみにしっかり人を襲う。
「装備は?軍曹連に食糧と浄水器は持たせるとして、強化外骨格は必須だな。」
「基本的に取り回しのいいライフルは基本だろ。弾薬はきっかり8個弾倉を持っていかんとな。」
「軍用ナイフは必要ですね。拳銃は私は私物のリボルバーを持っていくつもりです。」
突飛な訓練は何時もの事だ。その前のブリーフィングは慣れているしATを放棄し逃げる時の訓練にもなる。
「須毛原、俺の45口径を貸してやろう。」
俺の唯一の趣味と言っていい物が銃の収集だ。
「大柳と佐伯も来い。准尉祝いに拳銃をやる。」
「「いいんですか!」」
「強化外骨格も受け取らなくちゃ。」
確かにあの用意周到な准将の事だ。既に用意されているだろうと思ったら。
「A中隊、須毛原の指示で暫く動け。大柳、佐伯着いてこい。」
先ずは格納庫、その後私室にむかう。
†
すんなり、受け取り着用させ、俺の私室へと迎える。
「45口径自動拳銃。スプリングフィールドのXDだ。装弾数は13発。大柳にだ。佐伯には二式回転拳銃。.454カスール弾の6連装だ。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。そう言えば中尉殿は何を?」
「コルト・ガバメントだ。」
好きなんだよなぁ。俺が銃の収集を始めた切っ掛けでもある。
「装備を受け取りにいけ。その後門で集合だ。」
俺は仕込みがある。あの少佐の思い通りになるものか。策を練り、知恵をはたらかせ裏をかき、叩きのめすのは万物の霊長を名乗る人間様の特権だ。
†
俺が2人と別れて向かうのは航空司令部。俺はまだ先の話だが綾戸閥を受け継ぐ人間だ。
つまりは幼い頃から同年代の高位高官の息子娘、同期の軍人。友人の軍人や役人。その他企業家etcetc…それなり以上のコネクションを持っている訳だ。第876近接航空支援群。
VA-1ケラノウスを装備する部隊だ。
「端山大佐は居るか?」
「中尉殿、端山大佐は執務室に居られます。アポイメントは?」
秘書だろう伍長に堂々と言い放つ。
「綾戸中尉が来たと伝えてくれ。」
「あ、綾戸中尉殿ですね!今すぐ!」
「…何をごちゃごちゃと騒いでいる?」
「端山、少し頼みがある。」
現れたのはボサボサと乱れた茶色の髪に日本人の平均身長よりも低い中年の大佐。
「翔也か。何だ?」
「こちらで訓練があってな。模擬用ペイント弾でうちの少佐殿の小隊を撃破して欲しい。」
「また、頭のおかしい訓練か?」
「そう。生身の俺たちに1週間逃げ回らせ見つけたら観測射撃だと。」
「成程、おもしれぇ。うちの
「…俺はそれは知らん事にする」
2人でニヤッと笑い。俺は集合場所へ向かった。
「…伍長、中尉は通せよ。」
「はい。失礼しました。」
†
強化外骨格に
炭素鋼で成形された軍用ナイフを腰に装備し脚のホルスターにガバメントを差す。
「各中隊集結。いいわね逃げ回りなさい!」
その号令でバラける。
中隊事に固まり分散しつつ事前に打ち合わせたとある洞窟で合流した。
「脱落者は0だな?」
「ええ。」
「勿論だな。」
先ずは設営。浄水器や簡易的な野戦オーブンを作り、運んで来た食料と近くで野生動物を狩る班を作り分割し動く。
「須毛原任せる。B中隊といってくれ。CとAは設営準備だ。」
キャンプ設営やその他孤立時のサバイバル演習だ。
『ストーカー01よりバーレイグ。攻撃開始。』
ATは演習モードにする事が規定で決まっている。演習モードは一定以上のペイント弾を受ければ関節と砲が固定される。
「了解。」
『全弾命中!ちゃんとハッチに命中させてやったぜ!』
「感謝、帰投せよ。」
『今度奢れよ。』
「勿論。」
さてと、あの少佐は100%1週間後まで迎えに来ない。ATを放棄し、徒歩状態でのサバイバル訓練としますか。
†
某もう一人のエース
「あいつは鬼だぜ?まともな部下には甘いし、優秀な人間には優しいが他人を巻き込む無能にはもう、それこそゴミ屑以下の扱いだ。A中隊はそんな奴の掃き溜め。同時に訓練を受けるB、C中隊もそうだし監督する俺たちも鬼のような訓練を受けさせられた。」
某女子中隊長
「普段はいい人ですし優しいんですけど訓練では全く優しくないです。私も一応はインド方面で戦闘をしてきたベテランなのに着いていくのがギリギリでしたね。候補生?そんなのついてけないに決まってるじゃないですか。我々幹部はあの人に奢らせましたよ。」
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